「キャハハ、
空間中に張り巡らされた黒い流動体が脈打つように蠢いて声を発する様は
「まァ、決してあれは僕の趣味ではないけどね。血の髄まで私欲で薄汚れた権力者の肉体を爆散させるなんて…お粗末だと思わないかい?」
恍惚に歪んだ辺り一帯の瞳からジュルリと唾液が溢れるように涙液が滲み出る。
「その方が
「キャハ、アハハハ!
悦びに歪んだ瞳の涙腺が、曲線を描いて僕らを嗤う。
僕が彼女に会うのはこれで二度目だった、その時から僕は彼女が苦手だった。
「ハハッ、"囚人"っていうのは世間知らずでいいな!」
「お前が長いこと服役してる間、世間は変わった。
今の世の中じゃお前みたいな自称精神異常者は薄ら寒い量産型のサイコ気取りのレッテルを貼られ、冷ややかな目で観られる嘲笑の的だ。」
「お前には今から考え直して"真人間"として生きることを勧めてやる。」
「…ハァ、"世間"だの"真人間"だの…口を吐く台詞も随分温くて甘くなったね。ボク、ガッカリだよ。
昔のキミは俗らしい言い方をすれば"尖ってた"、それをこうも丸く矯正させたのは、他でも無い"ショコラテリア"なんて腑抜けた組織じゃないかしら?」
実を言えば彼女も以前、ショコラテリアのメンバーだった、但しほんの一瞬の出来事だったけれど。
ミッキーが彼女をショコラテリアに迎え入れて、馴染みの僕やホーモォの顔ぶれを目にした次の瞬間、激昂した彼女の黒い大蛇の様に唸る
当時新築だった
初めてのマイフォームにも等しかった僕の城塞が一瞬にして崩れ落ちたあの瞬間、僕は怒りに狂う事も絶望し慟哭する訳でも無く、ただただ虚無に至る喪失感で、ドアの先床の無い虚空を前に呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。