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私も新作の書き出し部分を評価してほしい。
曖昧な箇所があれば指摘をください

『すきです。およめさんになってください』
『………私、悪い魔女ですわよ?』

 月が綺麗な夜だった。育った場所から逃げ出して、これからどうしようかと途方に暮れていた僕は歩き疲れて座りこんでいた。
『小夜曲………?』
 そんな時に奏でられた旋律にふらふらと引き寄せられて侵入した大きな屋敷の庭。そこで透き通るような銀髪の人がバイオリンを弾いていた。
 月明かりに照らされて、腰まで伸びた銀の髪が踊る妖精のような姿から奏でられる支配的な音の暴力。
 僕はそれに魅入られた。自分から姿を現して、歌を歌ってしまうくらいに。その人は僕を見て、大きく赤い目を見開くと、すぐさまテンポを上げていく。
 短くて、長かった時間は唐突に終わりを告げる。それほどまでに楽しかった音楽をやめたあの人は僕を見て、バイオリンをしまうと、
『随分と可愛らしい天使ですわね。私の演奏に合わせられるなんて。歌は誰に教わりましたの?』
 僕に話しかけてきてくれた。なのに、僕はあの音楽と目の前の人に魅入られた興奮そのまま、一輪の花を握り締めて、差し出した言葉に彼女は困ったように眉を寄せる。
『申し訳ありませんわ。あなたのお嫁さんにはなれません。だって私は魔女ですもの。あなたを弟子にはできないわ』
 純粋なまま告白してくれた気持ちに答えるためか、魔女様は足を止めて目線を合わせるようにしゃがんだ。
『ダメ、ですか?』
 じわりと、世界が歪む。目の奥が熱い。断られる事なんて当時の僕は想像していなかった。だけど、魔女様は僕から花を受け取ると、掌で花を包みながら、
『だって私があなたをお婿さんにしたいんですもの』
 開いた手には花で作られた髪飾りがあって、魔法だと気づいた時にはそれが僕の頭に乗せられていた。
 そのまま藍に染まった髪の手触りを確かめるように撫でる魔女様の目には慈愛と戸惑いが浮かんでいて、なんでそんな目をするのか僕には全く分からなくて。
『魔女様は、何故そんな目をするの?』
『そう………ですわね。あなたも好きな人が出来たらきっと分かりますわ。人を愛する事は、幸せになるのはとても難しいって』
 魔女様の綺麗な顔に影が落ちる。何故だか分からなかったけど、幼い僕はそんな魔女様の顔を見たくなくて、僕は強く励ますように。
『じゃあ、僕が魔女様を幸せにしてあげる! 魔女様が幸せ過ぎて困っちゃうくらいに愛してあげる! だから約束!』
 動きが止まった魔女様の小指に自分の小指を絡めて、月夜の下で誓いを立てた。
『大きくなったら、僕を魔女様の弟子にしてください!』
『──ふふ、なまいき。でもちょっと救われましたわ』
 その言葉を聞いて轟々と輝く炎のような紅眼に初めて光を灯しながら、魔女様は頷いた。そのまま立ち去ろうと魔女様は屋敷に足を進めれば、忘れてたとばかり振り返った。
『あなたの名前は? 可愛い天使ちゃん?』
  呼び止められた僕はこれ以上ない笑顔で、答えを返す。
『アグネス! アグネス・アングリウス! 魔女様のお名前は?』
『フィオーレ。"調律"の魔女、フィオーレですわ。じゃあね。アグネス。大きくなったら、会いに来なさい。私は──』
 僕に対して、魔女は柔らかく笑っていた。夜明けに咲いた一輪の花のように。
『──魔女集会で待ってるわ。あなたへ愛を奏でながら』
 何度、夜が来ようと思い出す、あの、運命の夜を──きっと忘れない。

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  • 1242
    北欧怪文書の人。 2023/07/15 (土) 20:42:13 >> 1239

    『支配的な音の暴力』
    →支配的と暴力が意味的になんか被ってるので『凛とした姿には対照的な、支配的で艶やかな音』とか、

    『炎のような紅眼に初めて光を灯しながら〜』 
    →光無いの?炎なのに?ってなるので『傷ついて燻んだルビーのような瞳に〜』とかで、それぞれいけるんじゃないかなと。

  • 1246

    ジャンルはおねショタ?なのでしょうか。他の方も仰っていますが弟子についてはやや唐突な感があって読んでてどこか読み飛ばしたかと思いました。