脊髄北欧怪文書『終末探偵スルトさんの週末。EX-2』
……またか。しかも今度は事務所の机にダイレクト召喚と来た。
つくづく運の無い人形だ、な……ウン?
見た目が微妙に違うな、なんだお前、前の人形じゃないのか。
(聞こえますか、聞こえますね?赫い瞳の騎士殿。
今あなたの脳内に直接お話しています。見た目ちっちゃくてつやつやですが、それでもぶっちゃけエンは食べても美味しくないです……ので、ご飯にするのはあきらめてください……是非に……何卒)
誰が食うか。ムゥ、今日に限ってまだ助手は来ていない……さっさと送り返そうにも、俺にレイシフトのような大規模な転移の魔術の素養は無い。
騎乗スキルが微妙に無い事も無いが、アレはなんか違うだろうし……あぁ仕方が無い、テキトーに誰かに言伝して、後は門か、しからばアビーチャンにでも投げるか。
ウン、来たか助手、ちょうどいい、お前今からアビーチャンにだな……。
──はじめましてこんにちは貴方が終末探偵なる御仁ですね私の名前は呼延灼デキる通りすがりのアサシンですどうぞよろしく!!突然しかして早速ですが貴方に依頼がありましてですねいえただの失せ物であるなら私にも見つけられますがちょっと事情が事情でしてマスターにいただいた人形なんですがァアアアアエンンンン!!ああすみません思い出したら胸中に悲嘆の嵐が!エンよ貴方は今何処ーーッッ!!
待、待っ、情報が!情報が多いッ!出会い頭に泣く脆弱すぎるアサシンなぞ聞いた事が無い!クッ、まぁいい、お前の要件はわかっている、どうせこの人形の持ち主だろう、ホラ……急に倒れるな、オイ、どうした謎のアサシンのお前、しっかりしろ。
(聞こえますか、微妙に優しい強面の方……エンのご主人は諸事情ありまして繊細なので、ちょっとでも罵倒されるとぶっ倒れるのです。起きたら多分割とさくっと帰れると思いますので、今しばらくお待ちくださいませ……お手数おかけいたします)
一瞬座に帰りかけていたのは、果たして繊細というレベルか?かつてそれはもうバッチバチに戦り合った俺が言うのも何だが、カルデアはやっていけるのか……?
(あっハイ、明日もみんなでお祭りするんです、たのしいですよ!)
……アー、うん、そうか。そうかよ。ならいい。
健やかにするがいいさ(※探偵にあるまじき思考放棄)