おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 203

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村雨の夫 2017/03/31 (金) 20:56:43

「もう四月」
「早いですよね、ほんと」
「ね。…ん、おいしい」
三月末日、あいにくの雨。冷えるというほどでこそないが、まだ暖気は遠い。未だ来ぬ春を補うように暖かな夕食。

「一月は行く、二月は逃げる、三月は去る…」
「おさるさん?」
「いなくなっちゃう、ってこと」
何気なく口にした言葉に、娘たちが反応する。春休みは宿題がないとはいえ、バタバタの半年だったからには、この春少しは予習復習してほしい…と口を酸っぱくしてきた甲斐があったかな。

「そうそう。朝霜、よく知ってるねぇ」
「……このくらい、フツーだし」
「あら?じゃあ六年生は普通にいい成績期待しちゃおうかしら」
「なぁっ!」
相変わらず、村雨ちゃんは隙がない。そんなところも勿論好き。
「パパは?目標」
こちらにその砲口がむけられたとしても、だ。

「あー…そうだなぁ」
「お正月のぼんやりの繰り返しはダメよ?」
はぐらかしても意味は薄く、朝霜はしびれを切らして次をも見ている。
「睦月もちゃんと考えとけよ、次来るぞ」
「にゃっ!」
「ね・ぇ?パ・パ・は?」
「皆と幸せに、かな」
視線の先で、村雨ちゃんが赤くなる。僕もきっと赤い。現実の本心だけど、夢みたいな言葉で、まっすぐ目を見て言うにはなかなか気恥ずかしい。けれど、夢を見なきゃ生きちゃいらないよね。

「さ、睦月は?」
「う~ん、おっきくなる!」
「おっきく?」
「ママやパパや、お姉ちゃんや、お姉ちゃんたちみたいに!」
出会いは彼女を大きくした、と思ったが、それ以上に大きくなる糧になっているらしい。まったく喜ばしい。ママの方が先に出るのは…まぁ、いっか。些細なことだ。
「ふふ、いい心がけじゃねえか」
「朝霜は、ちょっと言葉遣い治しましょうね?」
「立派なお姉ちゃんじゃないと追い越されるよ」
「うぐっ……わかった、よ」
そしてひとつ、笑い声。あんまり強制も矯正もしたくないんだけど、そろそろ目に余るしなぁ。自分のためにも睦月のためにも、頼むよ。

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  • 204
    村雨の夫 2017/03/31 (金) 21:00:03 >> 203

    「で、母ちゃんは?」
    「パパとおんなじ、かな」
    「それは心強い」
    「…でも、幸せってなぁに?」
    「…そういえばわかんねぇ…わかんないな」
    二人にはまだわからないようだ。不幸を知らないってことなら、親冥利に尽きる。
    「皆で笑っていられることよ」
    「そうだね。今、パパは幸せだよ」
    「…じゃあ目標簡単すぎるだろ」
    「ずるっこ!」
    「なにをー!?」
    そして再び、僕らは笑う。愛する妻と娘ふたり。幸せだなぁ。

    次の幸せは花見だろうか。また考えよう。
    家族と姉妹はいつも通りとして、新任教師に同級生ちゃん、青衣に喫茶に劇団……ふーむ。また考えておかねばな。