おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 202

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202
村雨の夫 2017/03/05 (日) 23:23:47

春麗らかなる三月五日、村雨ちゃんはお休みの日。

艦娘としての力の代償なのだろうか。逆に、宿命があるから艦娘になったのだろうか?彼女たちは「艦船」の運命に足を取られることがある。その原因は、当時の誰にも答えは出せなかった。深海との戦争が終結し、残党狩りや海上護衛のため運用されている今でも、明確な答えは出ていないらしい。一介の退役軍人である僕には知りようがない。
卵が先であろうと、鶏が先であろうと、彼女たちが苦しむことには変わりはない。僕にできるのは、精々休みを作ったり、紅茶を淹れたり、今は家事を請け負ったり。その程度だ。
原因がわかったら教えてもらえるように在軍の知り合いには言ってあるが、はてさて。

症状が出たり出なかったり、年と人によって違ったりするのだけど、今年は残念ながら、朝から起きれないほどにブルー。終戦後これほどになるのは何年ぶりだろう。義姉さんたちも他の仲間たちも、勿論村雨ちゃんも終戦後……艤装に触れなくなってから滅多に重く出ないって言ってたんだけどな。

三月も書き入れ時である以上、わざわざ白露家からひとを呼ぶことはできない。暖かくなってきた季節、どうも様子がおかしいことに勘づいたようで、一日家の手伝いをしてくれていた。外で遊びたかろうに、悪いなぁ。
ママに憧れる睦月、ライバルに火をつけられた朝霜。二人で手伝ってくれた家事は、村雨ちゃんどころか僕にすら及ばないけれど、ありがたい、ありがたい。すぐに上達してくれるだろう。

ちぐはぐなようで、平穏な一日が終わる。娘たちはママの心配をしつつ、いつも通りの時間で消灯。
村雨ちゃんは結局、ずっとローテンションだった。娘たちに笑顔を見せてはくれたけれど、身体がついてこない。本当に、戦時中くらいの重さだった。
「ほんと、やになっちゃう」
「まぁまぁ、明日になったら元気になる…はずだよ」
「そうなんだけどね…あなた、はやくこっちきてよ」
「はいはーい。本当、大変なもの背負っちゃったよね…背負わせちゃったのかな」
「……あったかい」
「こちらこそ。体は大丈夫なんだよね?」
「たぶん」
「……三人目、じゃないよね」
「うーん、ちがうとおもう。かんじがちがうもの。ざんねん?」
「ちょっとね」
「うふふ。わたしも」
「そりゃ嬉しいな。……君も、二人も、もし三人目を授かっても。頑張って護るから」
「ありがと」
もう一度、笑顔。ゆっくり撫でて、おやすみなさい。
柔らかな髪。優美な輪郭。暖かな体と心。大好きな人。

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