おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 169

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村雨の夫 2016/12/13 (火) 21:16:11

「クリスマス対策会議をします!」
「おーっ!」
「……なんでうちでやるんですかね、義姉さん」
ついつい疑問をこぼしつつ、昼時のゲストの白露義姉さんと夕立ちゃん、そして村雨ちゃんと僕の分、四人分のミルクティの用意をする。させられていると言ってもいい。
「ごめんね、騒がしくって……」
「まぁまぁ、いいじゃないの?私たちも子供たちのプレゼント、考えなきゃいけないでしょ」
「まーそうだけども」
「今年も一緒にパーティするんだから、これが一番効率がいい!」
「睦月ちゃんや朝霜ちゃんの分のお菓子も持ってきてるっぽい!」
「もちろんあの子たちが来るまでに会議は終わらせるよ?ほら座った座った!」
言いくるめられて言う通り。これでもこの人たちの上司だった過去があると自分でも信じられない。否、あの頃も給仕くらいはさせられて、もとい、していた気もする。ともかく、今は義姉と義妹と愛妻である。炬燵を囲んで、パーティの準備を始めよう。

「……これでどうでしょう、夕立さん」
議長の真剣な声が、クリスマス会議会計担当に問う。静寂の中、電卓を叩き、メモ帳をペンが走り、本職会計から受け取った資料と見比べて、そして。
「……予算内!大丈夫っぽい!」
無事、認可され、緊張の糸が解ける。会議を始めて数時間、これにて決着。白露義姉さんは寝転がり、村雨ちゃんは息をつく。夕立ちゃんも同じく安心した様子で、手早く会計道具を片付ける。「いつ帰ってきてもおかしくないっぽい」とは、気の利いたことで。
そしてその予見通り……と言うほどではないけど、息抜きもそこそこに睦月が帰ってきた。お姉ちゃん二人に喜んでいるところ悪いが、先に宿題をしてもらおう。僕がそう言わずとも提案し、その上監督役を買って出てくれるあたり、義姉さんも大人になったものだとしみじみしてしまう。全く、誰目線なんだか。村雨ちゃんも同じことを考えていたのか、二人を見て優しい目をしていた。

「……あのさ、おじさんいつも5時には解散しましょうって言ってるよね。暗くて危なくなるからって」
「うぅ」
「…ごめんなさい」
「そんなこと言っても、冬なんだから仕方ないじゃーん!いっちばん早く暗くなる季節って知らないのぉ?」
「白露義姉さんが口答えしない!」
17時をしばらく回って、遊びに来ていた如月ちゃんと清霜ちゃんの送迎をしている。いくら同じ小学校区の近所だからって、子供の足なら時間がかかる暗い道を、女の子だけで帰すわけにはいかない。自転車を荷台に詰め込んで、今日「も」楽しいロスタイム……そう、「今日も」である。恒例になりつつあるのはあまりよくない傾向なので、厳しめの口調で釘をさすが、まさか助手席からの反撃が雨あられとは思わなかった。
「だいたい、もっと早く注意すればよかったんじゃないの?お・じ・さ・ん?」
「お前がいつまでもこの子たちを放さなかったせいだろ!」
「あーお前って言った~!お義姉ちゃんにそういう言葉遣いいけないんだ!」
「うるさい!お前はお前だ!」
「……なんだか、懐かしいっぽい」
前言撤回、こいつはいくつになっても一番の悪戯娘。よそ見をできないからわからないけれど、わかる。白露はあの頃と同じ顔で笑っている。僕も、あの頃に戻っているのだろうか。
なんだ、かんだと言い合っている間にくすくす、と背後から押し殺した笑い声が聞こえてくる。少女三人、特にちょっと叱ってしまった二人が楽しいならそれでいいかもしれない。清霜ちゃんはちょっと大笑いしすぎな気がするけど、咎めるほどではない。…というか、朝霜ほどではない。
「なぁに笑ってるの、おじさん」
「なんでもない。あと白露、お前はそう呼ぶな」
そして、送り慣れた家に着く。しかして、すこし見慣れない姿。自転車を下ろして、つい見惚れてしまう。
「すごい……」
「うふふ、もうすぐクリスマスですもの。父が張り切っちゃって」
「イルミネーションか。いいお父さんだね」
「いいなぁ、わたしもパパにお願いしようかなぁ」
「それじゃね、如月ちゃん!」
「はい、また今度。今日はありがとうございました」
彼女はドアから踊るように降りて、一礼。光を浴びて、髪が、髪飾りが輝く。最後に一言、「舞台のこと、また連絡するね」と付け加えると、「楽しみにしていますね」と微笑んで応えた。迎えに出てきたお母様は、如月ちゃんに似て美しい。彼女も旦那様の一番なんだろう。僕の村雨ちゃんと同じように。

雪が降りそうで、降らない夜。清霜ちゃんに舞台の話をしながら、闇を照らして進んでいく。最愛の家族のもとへ、早く帰してあげなければ。

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