〜ヒリゾ浜②〜
逸る気持ちを教えてまずは浅瀬にて利根川の泳ぎのスキルを確認。
最初は不安を感じたけれど多摩川式訓練法で無理矢理形にしていく。
バディ組んでフル装備のガチ勢っぽい人が浅瀬で泳ぎの練習をしているのは傍から見れば少し面白いだろうが基本を疎かに出来ない。
心と体が壊れてもまだ再起するチャンスはあるが命が壊れたら問答無用で終了。
多少泳げるようになっても若干あぷあぷしてる節があるのでまずは足の着く水深でシュノーケルクリアの方法や泳ぐエリアの指定などを済ませる。
また少しだけ深場に連れて行き立ち泳ぎだけはしっかり出来るようにする。
ただ思ったよりもずっと上達が早かった上、懸念していた海流の流れる先にしっかり監視船やライフセーバーがたくさんいたので、少し時間が経てばそれなりの場所を泳ぐ許可が出せた。
利根川が休んでいる間、多少深場にも連れて行きたいので潮の速さや危険なポイント、また深くても岸に捕まって休めるポイントを重点的に探す。
〜ヒリゾ浜海中レポ〜
どれだけ描写出来るかわからないが今回の旅の最大の山場、多摩川謹製シュノーケリングルートを描写する。
スタート地点は内部に腰の高さまで水没した細い通路を持つ三角形の大岩だ。
暖かい海水に包まれながら砂地を這うように泳ぐとその中に入れる。
飛び出た珊瑚や岩を身をくねらせて5mほど泳いでいくと水深はやがて深くなりだんだんと離陸していく感覚になるのでまず最初に利根川を連れて行こうと思った。
半分水没した岩の亀裂を通り抜けているので側には珊瑚やイソギンチャクが着生している。
スタート地点としては相当にドラマチックで演出として魅力的だろう。
そうして大岩を脱出すると眼前に広がる深いブルー。
この先は中木の渡し船が行き来する水路でかなり深い。
トンネルの外でいきなり水深5〜7mになるので慣れていないとパニクる可能性もなくはない。
ただ、この解放感と浮遊感は筆舌にし難く、初体験なら尚更一生深く魂に刻まれるレベルだと思う。
本格的に深くなっていく水路は避け大岩の外周を辿るように泳ぐ。
半周した後、潮の流れに乗るように岩から離れると銀色の小魚の群れに突入する。
最大水深8m程の透明な青の中で前後左右全て小魚が陽光を受けて煌く様子はなんともファンタジックだ。
また近くを流線形で白色の体のギンガメアジが宇宙船の如く通りすぎるのでSFチックでもあった。
陸からは見えないが海中は入り組んでいて当然海の中でしかわからない起伏も多い。
海中を飛ぶ様に向かったのは珊瑚の森(便宜上、勝手に呼んでいる)だ。
いくつもの縦方向へ伸びる岩にイソギンチャクや珊瑚、海藻が揺らめき、その間を通り抜ける事が出来る。
ここもまた誰かにデザインされたかの様に飽きることのない空間だ。
立体構造故に潜水して隙間の暗がりを眺めるのも楽しい。
都合良くいつも何かがいるわけでもないけれど、そこそこの確率で大きい魚と目があったりと収穫も多い。
岩の上面がちょうど水面ギリギリまで伸びているポイントがあるのでそこで一休みをする。
人でごった返す浜も遠くに見え、ここが海のど真ん中だと再認識する。
次に向かうのは岩と岩に挟まれた海中の通路。
幅は5mほどで下には大きいハリセンボンが数匹いる。
潮の流れが今回のルートの中で一番速く、逆らって泳ぎ切る事で利根川の腕試しをするつもりで連れてきたのだが残念ながら敗退。
だんだんとハムスターが滑車を回す様を幻視してしまったのは本人には秘密である。
と言っても後退はしていなかったのでかなり惜しい。
予定を変更し再び潮の流れに乗り、当初定めた遊泳可能なエリアの最端まで移動。
これは浜の端から端までの距離となる。
水深は2〜4mあたりだろうか。
浅めなのにも関わらず50cmを超える大物が珍しくもないのはヒリゾ浜の特殊性を物語る部分だと思う。
今回見た中で一番大きな魚は70〜80cmはありそうな巨大なアオブダイ。
鮮やかな青と頭のコブが特徴的だ。
海底近くをゆっくりと泳ぐ様はなかなかに迫力があった。