〜中木港〜
多摩川の母方の家系図を辿ると、とある有名な神社に行き着く。
さらに辿れば天候を司るシャーマンにも辿り着く。
そう、多摩川は実は天気の子である!
とまあ強引なこじ付けであるのはわかっているが、実際あまり天気で苦労した事は無い。
いつも肝心な時に「晴れろ晴れろ晴れろ晴れろ」と念じれば、何か晴れてた気がするのだ。
で、結果から言うと2日目は晴れた。
数日前から朝まで続いた雨という予報はご都合主義よろしく見事に覆り、我々が海に辿り着く頃は照りつける日差しに海が輝いていた。
中木港、元は地元の人しか使わない小さい港だった面影があるがそれなりの賑わいを見せていた。
ファミリーも多いが水着で肌を露出する層は全体の2%程に満たない。
だいたいはラッシュガードやウェットスーツなどの装備が徹底されており全力で海そのものを楽しみにして来た様に見える。
そんな様子に好感を覚えつつ周りを見渡せば、潮風に色褪せた数軒の建物群に最低限の軽食屋とマリンショップが入っているのがわかる。
軽食は丼物、移動販売のピザ、パーラー等でかなり魅力的だ。
昼はどれを食べようか相談をしつつ、ついに念願のヒリゾ浜上達を果たすべく渡し船へと乗り込んだ。
〜ヒリゾ浜①〜
海路から浜に近付けば見える黒く鋭角な崖と深度によってエメラルドグリーンから深い青へと変化する海水のグラデーションのコントラストが鮮烈だった。
流石に透明度は伊達ではなく接舷した船の影が海底に落ちているのすら視認可能だった。
船着場から浜へのアクセスも少し特殊で、遠浅の海に浮いた火山岩に幅80cm程度の板をかけ水上を歩いていくスタイルだ。
それだけでアトラクション感があり冒険好きの少年心をくすぐる。
水深は浅く1m程だろうか、今すぐ足を踏み外して海水に飛び込みたい衝動を抑える。
10m程進んだところで人でごった返す浜に出る。
浜と言っても砂浜ではなく丸い石が重なったものだ。
歩きづらいのも人が多いのも別に構わない。
ただ早く海に入りたいとしか思わない。
ウェットスーツを着るのに手間取る利根川に焦らされながら装備を確認、早く海に入りたい。