初日
〜集合、そしていざ出発〜
11時に手配したレンタカーでどんよりした天気の中、伊豆に向けて走り出す。
ただし多摩川は免許を持っていないのでお座り係長だ。
この時点で慰安旅行というのはただの建前に成り下がり、基本的には多摩川が多摩川の行きたい場所とやりたい事を告げて利根川に運んでもらうというわがままスタイルになっていた。
なので「これって自分がしんどそうにしてたから誘ってくれた?」と聞かれた時には「違う」と返した。
町田辺りで無事に渋滞に巻き込まれて予定到着時間はすくすくと伸びていった。
夏っぽい選曲という事で選んだヨルシカが「最低だー!最低だー!」と車内に響き渡る。
でもね、多摩川が楽しそうに笑ってるだけで救われる何かがあるんだよ。
きっとそうに違いない。
〜河津七滝オートキャンプ場〜
馬鹿だからわっかんねえけどよぉ……伊豆まで2時間くらいって言ってなかったっけ?
今18時過ぎてンだけど。
そう、我々は馬鹿だからわからなかったのだが、伊豆まで結局7時間かかった。
ついでに言うと馬鹿なのでロイヤルホストが気軽に入るには価格設定高めなのも今日知ったし、宿泊予約サイトで変なハンドルネームを使うと宿へ連絡する必要性がある時に詰む事も今日学んだ。
とはいえ、なんとか無事に宿に到着。
今回の宿は河津七滝オートキャンプ場だ。
渓流と黒々とした杉林、そして鬱蒼と茂るシダ類と煙る雨がまるで異界に入り込んだかのようで多摩川のテンションを高まらせた。
到着時間とかいう多少の誤差と雨の事は気にしない。
とにかく旅の醍醐味はやっぱりこの非日常感だと思う。
日常から解放されるには日常の中じゃダメだ。
物理的に解放されてようやく気持ちも解き放つことが出来るんだと思っている。
数軒が隣接したタイプでこじんまりした三角屋根バンガローが今回の我らの城だ。
ありがたい事に入り口前に屋根が張り出していて流し台も完備している。
ここをBBQスペースにしろと言われている感じであり実際に左隣のファミリーが団欒中だった。
ホテルに泊まるような利便性や快適性は全くないけれど、それが良い。
右隣のおじさんもアウトドアチェアに腰掛け「そうだそうだ」という顔をしつつ石像のように微動だにしない。
完全にキマっていた。
多摩川もはやくそれになりたい。