西暦20XX年、人々の営みは極度に発達した仮想現実空間(VR)で行われるのが常であった。
誰もがAI生成によるオリジナルアバターを身に付け思い思いの自らとして振る舞う。
そんな中、ハンドメイドのワンオフアバターなどとっくに廃れてしまったに思えたが、今もなおVRワールドの片隅にとあるショップが開かれていると言う。
「お客さんか……珍しいねぇ」
出てきたのはボロボロのツナギに身を包んだ怪しげな老人。
頭の上の年季の入った作業用ゴーグルから老人がこの店の主だとわかる。
「さあ、言ってみせな。お前さんが何になりたいか」
そう。この店こそが知る人ぞ知るハンドメイドによるフルオーダーが可能な最後のアバターショップであったのだ。
「まあ作るかどうかはワシの気分次第じゃがな」
まるでこちらを試すように笑う老人の目の奥にはギラギラとした炎が滾っているようだった。
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