おんJ艦これ部Zawazawa支部

おんJ艦これ部町内会 / 61

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村雨の夫 2016/08/31 (水) 01:23:33 5c457@381f6 >> 60

一回り二回りと見学して、先に案内された砂浜も行ってみようということに。
……静かだった。子供たちがいないという意味でもあり、平和という意味でこそある。
僕らが護った海。彼女らが護る海。潮風を受けながら、輝きを眺めつつ、手をつないで歩む。
「綺麗だねぇ」
「ほんとね」
「君のほうがきれいだけどね」
「……ふふ、なにそれ。かっこつけちゃって」
「鎮守府に来たからかな。子供の頃みたいにかっこつけたくもなる」
「昔そんなこと言われた覚えないんですけどー?」
「あれ、そうだっけ」
「そうでーす。ほんと、子供どころか坊やだったんだから。いろんな意味で」
「否定できないなぁ」
「でも、今は違うでしょ?」
もちろん、と応えるのを待たずに、手をほどいて走り出す。追いかけっことは、そちらこそずいぶんお子様ですこと。

太陽と時計の針は天辺より少し下方へ。
ラジオ体操で鈍りがほぐされてたからって、また走り出されたらかなわない。そう思って捕まえたときのまま腕を組んで合流したら、娘たちにはニヤつかれ、舞風さんは顔を赤らめる。そんな中、野分さんはひとりだけ妙に落ち着いてる。聞けば執事さんと舞風さんはダンスのペアを組んでるそうで、そのへんで見慣れてるのかな。
……それならなんで舞風さんは赤面したんだろ。誰かと自分を重ねて見た、のかも。

僕らが日差しの中にいたころ、少女たちは秘密の中にいたという。
お屋敷なんて初めてだからって、探検中に下手なことしてなかったらいいんだけど、そんな期待を裏切るように自慢げに戦利品を見せてくる。ずいぶん品のよさそうなお菓子に、小物の類。睦月は小さなペンダントを首にかけ、朝霜は不釣り合いな刀を佩いてる。記憶の時計を巻き戻して、そのどちらもが僕らがそうそうお目にかかれなかった褒章と気付き、すぐに夫婦で顔面蒼白。
すぐに謝って返そうとするも、今日の間は貸してくれるのだという。笑顔でさらりと言うあたり、提督も艦娘も、(主も従者も?)懐の大きなひとたちよ。……厚すぎるご厚意には甘えるけれど、どうか傷つけないでほしいと冷や冷やしてしまう。とりあえず、流しそうめんする間は動き回るんだしと説得して僕らが預かることにしておいた。

さてさて、お楽しみの流しそうめん本番。朝霜、睦月はそういえば初めてだったな。
舞風さんにコツを教わりながらなのか、楽しくやってるようでほほえましい。野分さん、執事さん、奥様は僕らと同様一歩引いて見守っている。
ふむ。さっきといい、以前のうちへのお泊りといい、野分さんはどうにも大人しいというか、大人らしい。過剰に厳しくされてるわけでもなさそうだし、もとよりの性分なんだろうか。何にせよ、ちょっと気になるなー。よそ様の娘様、その性分にまで気をやりすぎても大きなお世話かもしれんが、まだまだ無邪気になっていい年頃だろうに。もしも「お姉さん」が鎖になっているのなら、何か手助けしてあげたいなぁ。
「あなた?あーん♡」
「あーん。はい、村雨ちゃんも」
こんなことやってる大人に何か言われても、信用ないかなぁ?
同じ麺のはずなのに妙においしいのは、愛か、恋か、恋愛の色故か。

おや、舞風さんが何かなるほどって顔でこちらを見ている。……執事さん、ごめん。なんか入れ知恵しちゃったみたい。

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