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入社2日前に内定取り消し…34歳‟紹介予定派遣”でトラブル

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働き手が派遣社員として勤務した後、派遣先に正社員などとして直接雇用されることを前提にした「紹介予定派遣」制度を巡り、福岡市の女性(34)がトラブルに巻き込まれている。直接雇用の内定を入社2日前に取り消されたのに、誰も責任を負わない状況に陥った。制度は1999年、派遣社員に正社員への道を開くため始まったが、労働者の処遇に関して企業に幅広い裁量を認めており、不備が浮き彫りになった。女性は今春、登録する人材派遣会社で紹介予定派遣の求人情報を見つけた。一般財団法人で4~6月に派遣社員として働き、自分と法人が合意すれば、7月から法人の社員になる内容。派遣会社が間を取り持ち、社員になった後の給料の目安も示されていた。女性はそれまで5年間、複数の会社で一般的な派遣社員として働いた。一般派遣は同じ職場で最長3年しか勤務できない原則があり、身分が不安定と感じていた。「紹介予定派遣なら正社員になれるチャンスがある」と応募し、働き始めた。仕事に慣れた5月。派遣会社から、7月以降の採用を法人が望んでいると聞かされた。法人側が賃金などを記した求人票も仕上げた。正式な雇用契約書も作ると派遣会社に言われ、「すんなり決まってよかった」と喜びが湧いた。状況が一変したのは入社まで3日となった6月28日。自己紹介を兼ねてオンラインの社内プレゼンテーションで発表する機会があり、その場で、法人の関連会社の社長から非難された。「あなたの考え方では会社がつぶれてしまう」発表内容は事前に上司や同僚の了承を得ている。プレゼンで選考されるとも聞いていない。上司が働きぶりを紹介し、終了後も説得に動いたが、29日に直接雇用の撤回が決まった。「どうして」-。派遣会社に相談しても決定は覆らず、30日に退職。法人の事務担当者に責任を問うと、まだ直接雇用の契約を結んでいないため「あなたとの間には何の契約もない。派遣会社に言ってください」と相手にされなかった。採用内定の取り消しを巡っては最高裁が79年の判決で、内定時点で既に雇用契約が成立するとの考え方を示している。企業には解約権があるものの、取り消しは合理的な理由がない限り認められないと認定。厚生労働省は判例に沿い、派遣先に不当な内定撤回をしないよう求めている。派遣会社は取材に「5月に女性の上司と面会し、7月以降は直接雇用にしたいと聞いた。この時点で採用内定と認識している」と説明。法人にも同じ指摘をしたが回答はないという。この法人は福岡県や熊本県から福祉分野の職員研修の業務委託を受けている。取材を申し込んだが、依頼した期限までに応じなかった。厚労省によると、全国の派遣労働者数は2020年度現在で約193万人。このうち紹介予定派遣の利用者は約2万6300人で、58%が直接雇用された。利用者は減少傾向にあり、20年度は15年度と比べて約2万2千人減っている。17年に約1万件の事業所から回答を得た調査では、紹介予定派遣を「利用したことがある」としたのは6・8%。6割近くが「制度を知らない」と答えた。理由のない内定取り消しの禁止といったルールが周知されていない恐れがある。全国労働組合総連合(全労連)によると、直接雇用を不当に拒まれたという相談は少なくないという。伊藤圭一雇用・労働法制局長は「『派遣期間の業務が一定水準に達していない』などとして、当初の予定より低い待遇でいいなら直接雇用すると言われた人もいる」と明かす。紹介予定派遣制度は、派遣社員に対して就業前の面接の実施や、履歴書を送付させるなど、通常の労働者派遣で禁じられた行為を企業に認めている。直接雇用を前提としているためだが、例外措置によって企業側が派遣社員のえり好みをできるほか、採用の判断も主導権を握る面がある。九州労働弁護団会長の梶原恒夫弁護士(福岡市)は「最高裁判決に沿えば、採用内定を取り消すには通常の解雇と同じように合理的な理由が必要だ。企業側が一方的に内定を取り消すなどの恣意(しい)的な運用を続ければ、制度の趣旨に反する」と指摘している。

(2022.8.18 西日本新聞)

オフィスタ
作成: 2022/08/18 (木) 11:18:29
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