熊本産の青果、出荷増え安く、卸値、トマト26%メロン11%安、一部地震被害も生育順調。 2016/05/09 日経MJ(流通新聞)
熊本県を中心とした地震の発生から半月あまり。東京の卸売市場で熊本産青果物の出回りが潤沢になっている。農業被害の大きさからは意外に思えるが、2~3月の好天で生育が進んでいるためだ。出荷量の多さを反映して卸値も安め。被災地を「食べて応援」しやすい環境が整いつつある。
熊本県を代表する野菜で、冬から春にかけ全国に出荷されるトマト。東京都中央卸売市場の入荷量は4月下旬に1086トンと、前年同時期に比べ83%増えた。選果の人員やトラックの確保に苦労している産地もあるものの、2~3月の好天で生育が順調だった。
果物の入荷も順調だ。スイカ類の東京市場の4月下旬の入荷量は前年同時期を36%上回る1282トン。メロン類も22%上回る223トンを入荷した。「実を浮かせて栽培している農家は少ないため、地震で落下する被害は一部にとどまった」(JA熊本経済連)
トマトとメロン類は卸値も安い。東京市場で4月下旬の熊本産トマトの卸値は1キロ325円と、前年同時期に比べ26%安い。栃木など他産地も天候回復で出荷が増え、連れ安が進んでいる。メロン類は同11%安、スイカ類は12%高だった。
店頭価格にも影響が出ている。都内のスーパーで熊本産のトマトは1個100~140円が中心で、前年同時期に比べて約2割安い。中堅スーパーのいなげやでは、熊本産が主力のトマトの売り上げ点数が、2日までの1週間で前年比2割以上増えたという。今後も供給は比較的安定して推移し、主な青果の店頭価格も落ち着いて動くとの見方が多い。
もちろん、出荷が増えているといっても、本来あるはずだったペースに比べれば出荷は鈍い。トラック確保に悩むJAやつしろ(熊本県八代市)の担当者は「色の回りが早く、出荷が増える矢先の地震だった」と嘆く。「(被害が大きかった)稲作シーズンの始まる6月に例年より早くトマトの出荷が早めに終わってしまうのではないか」(卸大手の東京青果)との懸念も浮上する。