水田、水路崩壊・・・営農めど立たず 集落消滅 不安募る 熊本県南阿蘇村
日本農業新聞(2016/5/3)
熊本地震の影響で、熊本県南阿蘇村の立野地区が、集落存亡の危機にひんしている。大規模な土砂災害に見舞われ、水田や水路が崩壊するなど甚大な農業被害が出ており、経営再建の見通しが全く立たない。同地区は2012年の九州北部豪雨でも被災しており、相次ぐ大災害に農家ら地域住民の不安は極限に達している。
16日未明の「本震」で阿蘇大橋が崩落するなどした同地区。あちこちで山が崩れ、道路や田畑が谷底に引きずり込まれるように落ちている。今なおヘリコプターが絶えず上空を旋回し、土砂を運び出すトラックが往復する。
落ちた橋の目と鼻の先にある木之内農園。観光農園としてハウスでイチゴを栽培し、水稲やジャガイモなども含めると合計17ヘクタールほどあるが、ほとんどが壊滅的な打撃を受けた。木之内均会長は「恐ろしいほどの被害だ。このままでは地域が維持できない」と危機感を強める。
連休で多くの観光客が味わうはずだったイチゴは、水路が断たれ、ただ枯れるのを待つ状態。水田は波打ち、一部は崩れ落ちた。ジャガイモの被害は比較的軽かったが、倉庫が壊れ100トン以上の貯蔵がままならない。数トン単位でイチゴジャムなどを作るはずの加工施設も、立ち入り危険を示す赤い紙が貼られた。被害額は1億数千万円に上るという。
一帯は山と谷に囲まれ、現在は降雨時に避難指示が発令される。水路などのインフラ復旧は相当の時間を要する公算が大きい。来年の経営を見通すのは難しい。
同地区の約150戸が、水稲などを作る農家。だが、廃業や転居を検討するという声も上がっている。4年前の7月に起きた豪雨禍に続き、今回の地震でも大規模な被害を受けたためだ。梅雨が近づいていることもあり、地域住民の不安は極限に達している。
木之内会長は「復旧が遅ければ遅いほど住民は出て行き、戻ってこなくなる」と懸念し、可能な限り早期の対応を要望。農業についても「人件費を要する法人や外部収入のない専業ほど厳しい」として、担い手農家への支援を訴える。
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