熊本県 養豚農家の過半 被災 日本農業新聞(2016/5/1)
熊本地震の影響で、熊本県の養豚農家に大きな被害が出ていることが県養豚協会の調べで分かった。同会員94戸のうち、半数以上が飼料タンクの倒壊や給餌のパイプラインが破損するなど大きな被害を受けた。養豚農家が集まる阿蘇市や菊池市、益城町などに被害が集中している。
県養豚協会が県内会員94戸に対してファクスでアンケートした。結果、52戸が被害を受けていた。被害を複数回答で聞くと飼料タンクの倒壊で36戸、次いで給餌ラインの破損が32戸と多く、「天井が落ちた」や「地盤沈下した」など豚舎内の破損も8戸あった。
会員のセブンフーズ(株)も大きな被害を受けた。同社は菊池市などで、母豚2100頭を飼養し、年間5万頭を出荷する。今回の震災の被害額は1億円を超えると見積もる。七つの飼料タンクが倒れ、月900トンを製造する自家配合飼料工場も壊れた。飼料を豚舎まで運ぶラインは分断されていた。
「もう駄目だと思うほどの大きな痛手を負った」。同社の田嶋一博本部長は、震災直後の光景を見て、立ち尽くしたという。
豚の出荷を延ばすことはできない上、生産を落とせば、さらに経営に響く。ほとんどの職員が被災した中、タンクから手作業で飼料をかき出し、1日12トンの給餌に汗を流した。田嶋本部長は「まだ、地震が続くという恐怖もある。社員が一丸となり、支え合い、この状況を乗り切りたい」と力を込める。
同協会は被害状況を踏まえ、日本養豚協会を通じて国に、破損施設の修理、国庫や銀行から借入金返済の先延ばし、自家発電装置の導入助成を要望する。
同協会の坂井正次会長は「調査は現時点の取りまとめ。被害がひどく、ファクスの不通などで把握できない農家もいる。実際の被害はもっと多いだろう。生産基盤を確保できるよう、現場の実態に合った支援を政府に強く要望したい」と強調する。