進まぬ片付け 他人頼み「気が引ける」と遠慮も
熊本日日新聞2016年06月05日
被災者宅で瓦を片付ける災害ボランティア.。こうしたボランティアが入れていない被災家屋も少なくない=熊本市南区
熊本地震から1カ月半以上たった今も、がれきや家財の片付けが進んでいない被災家屋が少なくない。県内外から連日ボランティアが入っているが、他人に頼むのは気が引けるといったケースや、そもそも依頼の仕方を知らない人も。被災者支援にかかわる民間団体は「きめ細やかなニーズの掘り起こしが必要」と指摘する。
「1人では何もできなかった。ボランティアの方々のおかげです」─。熊本市南区城南町の林ヨシエさん(82)方は地震で壁材が落下するなど被災。1人暮らしのため片付けが進まなかったが、5月中旬にボランティアが訪れ、がれき撤去などを手伝った。
林さんが住む鰐瀬地区は高齢者や1人暮らしが多い。自力での片付けには限界があるため、住民間で各家の被害状況を共有し、区役所にまとめてボランティアの必要性を報告している。林さんは「梅雨前にめどがついて良かった」と喜ぶ。
一方、同市東区健軍の梅本裕子さん(43)方は今も被災時の状況のまま。庭には瓦などが散乱。台所の食器棚は倒れ、ガス台に覆いかぶさっている。梅本さんは「家の中のことを他人に頼むのは気が引ける」と言う。
避難生活との両立の難しさも。中央区の市総合体育館に避難している男性(77)は「避難所から自宅まで遠いので、片付けまで手が回らない。ボランティアの依頼の仕方も分からない」と表情を曇らせる。
同市災害ボランティアセンターは連日500~千人のボランティアを派遣。個人宅の清掃や災害ゴミの分別作業などに取り組んでいる。回覧板やチラシで住民の要望を調査し、平日で1日100件、土日は200件近い依頼に応じているが、自宅にいない住民については把握しきれていないという。
阪神大震災を機に被災地支援に携わる名古屋市のNPO法人「レスキューストックヤード」の栗田暢之代表(51)は「ニーズを聞き出す工夫が必要」と指摘する。東日本大震災では避難所などに足湯を設置。被災者と打ち解ける環境をつくり、さまざまな声を地域の社会福祉協議会に届けたという。
県災害ボランティアセンターは「仮設住宅への引っ越しなどが本格化し、片付けの需要は今後も続く」と予想する。栗田代表は「気兼ねしなくて済む民間の第三者が話を聞きやすい場合もある。被災者の思いをすくい取るには、行政と民間の連携が重要になる」と強調する。
(馬場正広、西國祥太)
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