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課題本と感想 / 32

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10/7 例会
『ゼロの激震』安生正
平均78点(最高点85点、最低点70点)
・背表紙に「このミス大賞」とあったためミステリ(犯人当ての要素のある)だと思い込んで買ったのだが、あまりミステリ要素はなかった。広義のミステリには当てはまるが、パニックサスペンスであった。
・目玉である噴火や地震の描写・説明の細やかさが特徴だと感じた。主要参考文献を見てもらえば、読者によりリアルに感じてもらうためにどれだけ作者が熱心だったかが伺える。
・実際に起こることはまずないが、どこか現実味を帯びた描写に引き込まれた人もいるかもしれない。
・後半の香月の行動が理解不能であり、深夜テンションに任せて衝動のままに無能アピールをしているとしか思えない行動であった。
・別方面からの主人公とも言える香月に露骨な無能さを晒させることはあまり意味のないことだと思った。モブにさせるべき行為だと思う。
・主人公たちが命をかけて噴火に挑む理由が希薄だと感じた。漠然とした国民のため、というよりは近しい人のための方が納得がいく。しかしこの点主人公は家族についても触れず、離婚もしているのでその理由が弱かった気がする。

『アステリズムに花束を』
平均点83点(最高点95点、最低点65点)
・全体的に百合要素がそこまで濃くなく、くどくないので気になる人も読めるし、百合が好きな人はもっと好きになれる万人受けする本になっている。
「キミノスケープ」宮澤伊織
・書くのが難しい二人称の語り口で綴られる異質な世界での話で、少し淡々としすぎている、一本調子感があるようも感じたが、街並みやその静寂感が逆に関係性を浮き彫りにさせるという対比がとても巧みで、実質セカイ系かもしれない。
・不在の百合を描こうとしているのが分かる作品。途中のメモ書きや砂浜の描写がきれい。
・この本が百合アンソロジーとされていることにより二人称であっても自然と百合を想像できる。
「四十九日恋文」森田季節
・設定は雑であるが書きたいことに的を絞っており、短い中でも読者に伝えたいことが明確に伝わる。
・ガラケーのレトロ感が良い。
・この世とあの世を繋がっている設定が好き。
・死んだ後の人の描写は作者の独自性が出ると個人的に思うので読んでいて楽しい。
「ピロウトーク」今井哲也
・今作唯一の漫画作品。さらっと語られる荒廃した世界で枕を探すJKが良い。
・最後のオチもこの本の物語に沿った笑いを誘うもので良い。
「幽世知能」草野原々
・関数百合の作品。難解な作品であり情報の多さとグロテクスさが特徴的である。
・小さなところから壮大な世界観が形作られていく。
「彼岸花」伴名練
・歴史改変SF×吸血鬼百合という好きな人は好きな要素を詰め込みまくった作品。
・戦前のエスもので、百合としても面白いし、所々に出てくるガジェットも面白い。
・伝奇的な設定の丁寧さに加えて言葉遣いもすごく美しいので隙がない。
・交換日記という体裁になっているのも上手く使われていて非常に良い。
・大正もの、帝都もの味を感じたり、スチームパンク感もある作品。
「月と怪物」南木義隆
・とても面白い発想から来ていて百合の幅広さを感じさせる。
・国という怪物を越えて2人が会う描写は美しい。
・2人が出会う描写にはザワッとさせられる。
・文章も、特に共感覚について、きれいな表現がなされている。
「海の双翼」木みわ/麦原遼
・理系的なアプローチの言語学的なSF作品。言語を3次元的な立体構成物として表現する装置とかの設定は確かに面白いが、意図的に読みづらくしてある文章があり、設定が今ひとつ分からないところがあった。
・最後の3人の関係はきれい。特に最初は翼などの独自の言語形態を求めながらも最終的には彼女自身を求めているところが。
「色のない緑」陸秋槎/稲村文吾訳
・近未来的な情報デバイスの設定や言語学的な話もとても面白く、それらによって動かされる人間の心情もとても丁寧に描かれているので百合としてもSFとしてもとても質が良い作品。
・話もしっかりとしていてまとまりが良く、ミステリ としても上質。
・最後の思い出を飲み干すという表現にそれまでの物語が集約してる感があってとてもきれい。
「ツインスター・サイクロン・ランナウェイ」小川一水
・スペースオペラ的にドンパチ漁業をするガチSFだが、軽快な語り口で巨乳美人と銀髪美少女が百合百合しているので読みやすい。
・正統派に正統派を重ねたような中で熱い物語をやってくれるのでTRIGGERである。
・最後にふさわしい弾みのある爽快感溢れる作品となっている。

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