真昼の迫真ランド

【SS】FREAK'S(フリークス) / 4

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相原ガガ美 2023/01/02 (月) 22:46:24

ミーバネルチャ治安管理局東部街(イーストシティ)支部、ミーバネルチャ東部街を管轄とする治安管理局員の支部であり中央街に配属された局員が立ち入ることもしばしば、勿論ここに用件があるのは"関係者"か"犯罪者"の2択だが俺は先日の
"夜宵エマ(泥棒猫)"の一件の断片者(フラグメンター)対策法第4項違反の処罰の際に御用になったから後者にも当て嵌まる。
そのせいか支部内を行き来する局員からは怪訝な目線を配られる、手短に用件を済ませて帰りたい。

今回用件のある裏虹虚空(うらにじこくう)のいる捜査一課は支部の2階、エレベーターを出て手前の事務室(オフィスルーム)を渡ってさらにその奥、ガラス材の間仕切り(パーテーション)で隔たれた窓際に位置していた、成果が得られず死人と辞表だけが残った部署がそこへ追いやられた(・・・・・・)"ようにしか映らないが。


「こんにちは、裏虹さん…ですよね。先程連絡した中野玲羽です。隣の間抜け面は大水木あきらっていいます。

「私が裏虹です、ははっ、何せ私1人しか残っておりませんので。」
「中央街から遥々足を運んで頂き恐縮です…さぁさぁ2人ともお掛けになって…」

裏虹虚空(にじうらこくう)、中肉中背の男性、年齢は28歳。それにしては言葉遣いや物腰からやつれたサラリーマンのような長年積もり積もった悲哀を漂わせている。過労と極度のストレスがもたらす物なのだろうか。

「単刀直入に用件を言います、裏虹さん達が担当していた"風船"に関する捜査書類を見せていただけませんか?」

「…ということは、あなた達が"風船"の事件(ヤマ)を引き継いだ班の…」

「お察しが早くて助かります、この度の"風船"の連続誘拐事件の捜査で裏虹さんのお力添えが必要だと考え連絡した次第です。」

その瞬間、裏虹と目が合った、裏虹の瞳は濁った水槽の様に光を失っていて生気を感じられなかったが、俺と視線が合わさったその瞬間驚いたのか興奮状態の猫のように瞳孔がカッと開いたのに思わず驚いて視線を裏虹の足元に鎮座する2段重ねの段ボールに移してしまう。

「…成程…いいでしょう、幸先の無い私に断る理由などありませんので。」
「ちょうど捜査資料が手元に残せるのが今日で最後だったんですよ。」

「失礼ですが、捜査一課は解体に?」

「えぇ、やはりこの一室の段ボールの山を見れば察しは付きますかね。ですがお見苦しいかもしれませんが私はこの場所が名残惜しい物です…」
「今はなき同僚と共にかつて罪人と戦った記憶が刻まれた場所なんです、ここは。だから私はその象徴とも言える捜査資料を今日まで手放せなかった…。(しか)し、貴方の瞳を見て私は揺らいだ。未だ全貌も分からぬ巨悪に立ち向かおうとするその決意がその瞳からは窺える。」

他国なら、"刑事の勘"と言うものか。この瞬間裏虹が洞察力に優れた人間だということは証明されたようだ。

「誠に勝手な願いにはなってしまいますが…私と、かつての同僚達の晴らせなかった悔いを、貴方達に託しても良いのでしょうか…」

「えぇ、一向に構いません…いや」


「…被害者の親族と裏虹さん達の無念を必ず晴らします、俺達だって死ぬ時まで局員やる覚悟で来てます、だから約束しますよ。」
「俺達が絶対に"風船"を捕まえてみせます。」

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