真昼の迫真ランド

【SS】FREAK'S(フリークス) / 14

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相原ガガ美 2023/05/14 (日) 00:28:05

俊明(としあき)が何気なく取った行動がかえって私を冷静にさせた。
あの"アリス"はどうやって廃墟の3人の監視を抜けてここまでやってきたのだろう。

「この子達もこれで飯事(ままごと)には懲りた様だ。さて…我が家に帰ろうアリス。他の子供達もお腹を空かせてパパを待っている。」

「待って」

「…どうした?アリス?」

"アリス"はばっと両手を広げて、無邪気な笑みを浮かべて言った。

「"ただいま"のハグがまだだよ。」

その瞬間、俊明は右手に握っていた銃を捨て去り、理性を忘れた獣の様に血走った目でアリスの元へと駆け寄った。
俊明が私達の元を離れると子供に退行していた体がどんどん元の大きさに戻っていく。
私は彼が手放した銃が地に落ちるより先に掴んで"正義の英雄役"らしい台詞を叫んだ。

「『てめーらの悪の親玉はそこ(・・)にいるんだろ』…なんてね。」パァンパァンパァン

急所を撃ち抜かれた俊明は去勢された豚の様な悲鳴を発した後、横向きに地面に転がり込んで泡を噴いて草原を走る夢を見る犬の様に足をジタバタさせているだけで、これ以上悪役の台詞を呟く事も無くなった。

「…大水木、や、やるじゃん。」

寝惚けたような声で玲羽が言った。

「ヘヘッ、これでまた私のキルレが…」
「…ぁっ。」フラッ

正気に戻った頃、私の体はどうやら頭で制御できる程健康ではなかったようで、そんな事に気づいたうちにそのまま意識が(とろ)けて、蹌踉(よろけ)た体が地にぶつか…


「…局員さん。」トッ

「………ぁ、アリス………?」

アリスが私を抱き抱えてくれた。

「…俊明(あいつ)をやっつけてくれて……」ポロッポロッ…
「……ありがとう。」


私の目蓋が閉じる寸前、最後に見た光景は
子供を演じていた"アリス"の、堰が切れた様に涙が溢れ出して止まらない───




──幸せそうな彼女の、満面の笑みだった。






―――
―――――…

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