真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 96

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ちゃむがめ 2021/08/09 (月) 23:01:57 修正

「そんな不治の病魔を唯一和らげることができる"特効薬"が"他者からの肯定"。私の最終目的は孤独に蝕まれた弱者達を"肯定"することで皆救済すること、断片者(フラグメンター)達はそれぞれが持つ特異性故に非断片者(フラグメンター)から隔絶された存在だからより孤独になり易い生物。弱者の心に共感することができるのが同じ弱者である様に、断片者(フラグメンター)の孤独に共感し寄り添うことができるのは同じ断片者(フラグメンター)だけ。」
「無責任に人類に断片(フラグメント)を与えた神様が、断片者(迷える子羊達)に救いの手を差し伸べないのなら、私自身が彼らを救う"神様"になってもいいかな。」ニコッ

教祖になった理由を打ち明け終えて彼女が私に振り向いたときに見せた笑顔は、どこか寂し気で張りついたような笑顔だった。
まるで自分自身も誰にも理解されない"孤独"を抱えていて、それを誰かに肯定してもらいたがっているような…

まるで私みたいだ…。

「意外といい人なんだね、茗夢は。」
「そんなことないよ。私はアザミの信徒達を、彼らを見殺しにした、無力な人間はどんなに綺麗な理想論を並べたところで全部無駄なの。」
「そうかもしれないけど…」
「中途半端な親切心はエゴになるんだよ、キミも私も偽善者。」
「…うぅ…。」

その時彼女の初めて見せたその険しく歪んだ表情に浮かぶ剥き出しの嫌悪が深く胸に突き刺さった。

「…なーんてね、今話したのは全部本心じゃないよ。…ただの前戯(イタズラ)、間に受けてたらゴメンね。」

茗夢がまたいつもの張り付いたような笑顔を取り戻す、それがまた彼女の自尊心を取り繕う軽薄な嘘であることくらい私でもお見通しだった。

「…え〜!?騙された…いつから嘘ついてたの!?」
「"キミの全てを肯定するよ"から。」
「…そうだったらめっちゃショックだからやめてよ!!」
「あははっ、そこから本心じゃなかったらウケるよね〜。」

私は敢えて彼女の嘘に気づかないフリをした、知り合って間もない他人の本心に踏み込むことが憚れたから、それが例え救いにならない偽善だとしても今の私は彼女を救う術を知らないから。

「…おしゃべりはこれくらいにして、その偽善心で私を塗り潰して今日を終わらせようか。」

やっぱり私のことは彼女には全部お見通しみたいだった。
茗夢がベッドに座り照明を落とすのを合図にして、私は彼女の柔らかな体を押し倒した。

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