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「ただいま〜!
「…おかえり、エマちゃん。」
ソファに腰掛ける茗夢はシャワーを済ませた私を気にも留めない様子で無地の背表紙のついた本を片手に一服、
「…何読んでるの?」
「"聖書"…。」
本気で言ってるのか、それとも冗談なのか分からない茗夢の返答に私は「ハハァ…」と渇いた愛想笑いを返すしかななくて不甲斐なかった。
「ねぇ…茗夢は何の為にアザミの"教祖"なんかやってるの?」
「知りたいなら教えてあげよっか?少し長くなるけど。」
「うん、知りたーい!」
茗夢は読んでいた本をパタンと閉じてテーブルに置くとソファから立ち上がり、
「エマちゃんはこの世界の中で生きる誰しもが求めていることって何だと思う?食欲や性欲みたいな生理的欲求は抜きで」
「え〜?何だろう…友達?」
「ほぼ正解かな、正解は"他者からの肯定"。現代社会において他者との交流が必要不可欠になった私達はある"病魔"に犯されやすい、それは"孤独"という病魔。」
「ヒトは他者と関わり合うことで知らず知らずのうちに自己と他者の間に心の壁を生み出す、自己の中に燻る醜い本性を他者の目に曝さぬ様に。その心の壁が他者の存在を拒絶し、孤独という病魔を自ら生み出してしまう。」
「つまり、この世界に孤独ではない人間なんて…いないんだよ。他者との関わりが密接なこの社会で、私達は孤独じゃないなんて錯覚してしまいそうになるけど。」
「…なんかわかる気がする。」
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