真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 53

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ちゃむがめ 2021/07/02 (金) 18:39:10 修正

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「おや、玲羽クン。ご無沙汰じゃないの、今日はどうしたの?」

一人掛けのソファに深々と腰を下ろしてそう訊く院長の名は迫真学(はくしんまなぶ)、おれのかかりつけ医師で度々お世話になっている。

「お久しぶりっスね迫真先生、今日は断片(フラグメント)について相談が」

「なんだ、やっぱりか。取り敢えず掛けてよ、少し診てあげよう」

迫真は相好をくずし、椅子を勧めた。
おれは彼に勧められた通りスツールに腰掛ける。
迫真はおれに袖を捲るようジェスチャーを送るのでおれは言われた通り袖を捲り、(あらわ)になった手首を差し出す。
迫真はテーブルからルーペを取り出しおれの手首を注視する。

「主な症状は?」

「おれの断片(フラグメント)… "蹣躯屍骸(はんくかばね)"が上手く抑えられないんですよ…こういう風に…」

おれが言い終えるより先に手首を腕から突出した"外骨格"がみるみるうちに覆っていく。

「フーン、これは困るよねェ、キミ自分が断片者だってことまだ同僚に黙ってるんだろう?」
「えぇ、立場が立場なんで。」
「そうだよねぇ…国が断片者(フラグメンター)の存在を認めて保護してくれたらキミ達も楽になれるのにね、アハハ」

迫真は他人事のように笑う、冗談じゃない。
患者(こっち)は真剣に困ってると言うのに、相変わらずこのヤブ医者は、と溜め息を吐きたくなる。

「ところでキミ、今日の電波ジャック見た?」

「…はい、起床して何となくテレビを点けたらそれが映ってたんで」

「フーン、なるほど…ね。」
迫真は首を傾げながら脇に置かれたテレビの電源を点けた。

『…続いて本日のアザミ教会の電波ジャックについてです。元教会関係者の方を急遽お呼びして…』

ワイドショーは案の定今日の電波ジャックの話題で持ちきりだった。

「玲羽クン、これはボクの推論なんだけどね」
テレビを眺めていた迫真が突然口を開いた。

「今日の電波ジャックの教祖の"断片者(フラグメンター)についての演説"に…キミの断片(フラグメント)が"共鳴"した可能性がある。」

「"共鳴"…ですか?」

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