真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 2

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ちゃむがめ 2021/06/21 (月) 22:03:49 修正

「あぁ…その娘は、817€。銀髪が綺麗でねぇ、生まれつき銀髪っていうのはこの国じゃあ希少だ。その上碧眼と来た、下手なガラス細工なんかよりもよっぽど美し…」

「買う」

「えっ」

饒舌な主人の品評を遮るようにミッキーは言った。

「…いいのかい?ミッキー、それに50€払ってくれれば"品定め"だってさせてやるのに。」

「お前と一緒にするなペド野郎、いいからさっさとこの錠前を開けろ。」

「…はぁ」

ミッキーの苛立ちに気が滅入ったのか主人のとしあきはそそくさとキーハンガーから牢の鍵を取り、格子の中の私の手を取った。

「いいかい?新しい主人にもちゃんと可愛いがってもらうんだよ」

目を細め私の全身を舐めるような視線を向け、たるませた頬を(あか)くし、唇の両端を釣り針で吊り上げたような気味の悪い笑顔は私に過去の陵辱の記憶を思い起こさせ、屈辱を味わわせんとる悪意に満ちた笑顔だ。
私は反射的に顔を逸らした。

「いい買い物ができた、じゃあなペド商人」
私の手を引いて足早に店を出ようとするミッキー、背後に物惜しそうなとしあきの視線を感じた。

入り口を抜けて私は振り返る、そこには赤レンガに覆われた館、いつも格子から除いていた群青の空が広がっている。
入り口の上にはネオンサインで「pousse Jardin(双葉の園)」と綴られている。
私はこの忌まわしき館から解放された、しかしそれは同時に新たな主人の支配に囚われることを意味する。
私は両手の手錠を見つめながら今にも悲壮が(せき)を切って溢れ出そうなのを抑えながら仮面の変人(ミッキー)と館の前で立ち尽くしている。

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