真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 178

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相原ガガ美 2022/08/30 (火) 23:57:41 修正

「悪いけど、ボクはそんな組織に入るのは真平御免だよ。
狂人気取りのキミ達の団欒なんか見せられたら、耳障りで喰い殺してしまいそうだから。」
「それより…本音を言えばキミに逢えただけでも、ボクは嬉しい。それに"思わぬ収穫"もあったからね!キャハハ!」

四方八方を取り巻く黒い流動体に埋まる無数の目から、感極まったのか墨のような液体が涙点からつーっと滲み出る。
液体は床へと滴り落ち、排水口へと流れ込む生活排水の様に渦を描いて一点に集まっていく。

「そうそう、眼鏡の倒錯研究員(・・・・・・・・)が監獄の外へ逃げ果せて、今頃外部の人間に聯絡が行き届く頃かしら。ボク"ら"もそろそろ頃合いにしよう。」

「次に会うのが待ち遠しいよ、"灰菜"ちゃんにもよろしくね。」

次の瞬間、僕達の眼前にはまるでそこだけ切り取られたような"空間"が押し出されたように溢れ出して、電子部品の破片やら瓦礫やらが飛び散って僕らの目を眩ませた。
幸い、隣にいたミッキーが"鍵"で目にも留まらぬ速さでそれらを捌いて、僕達は擦り傷も負わずに済んだ。
そう安堵するのも束の間、僕と彼の間に異空の穴が開いてモノクロム(あの女)がそこから首を覗かせて、彼に囁いた。

「じゃあね、オズ(・・)。」

そう言い終えたのと同時に、彼女の首は彼に怒りに身を任せる勢いで撥ねられた。
鈍い音を立てて床へと落ちていった彼女の首は、腐敗していく果物のように、ドロドロと溶けていって墨のような液体だけが残った。

寸刻の出来事だった、僕はまたあの時のように呆然と立ち尽くすことしかできなかった。ただ、思考が体に追いつかなかった。

「ミッキー、今の…」

正直なところ、僕には内心やましい感情が芽生えていた、あの一瞬のやり取りを見る限り、彼女と彼の間に唯ならぬ関係性がある事は火を見るよりも明らかだったからだ。

「あぁアレか、昔の渾名だ。今はもう捨てた。」
「それより早くズラかるぜ、文字通り袋の鼠になる前にな、ハハッ!」

彼の拍子抜けな返答を聞いて、僕はそんな気持ちを一旦胸に留めておくことにした。
これで僕と彼はお互いの"秘密"を共有し合う仲だ、こちらとしても都合が良い。


"僕に課せられた使命"が果たされるその日まで、彼を存分に利用する口実ができたのは僕にとっても大きな"収穫"だった。

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