真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 173

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相原ガガ美 2022/04/15 (金) 22:21:45

あれだけ何層にも厳重に形成された混凝土壁を突き出て現れた丸鋸の先端が、未来羽いろのその読みが不本意にも的中していた事を裏付けた。

虐殺兵器の丸鋸で削り取られた混凝土が砂埃となって回廊を舞った。
階層中を砂埃が覆い尽くしていく中、虐殺兵器の頭部と思しき部位に取り付けられた"目"が紅く照り付けて、こちらの様子を把握しているのが嫌でも分かった。

標的(ターゲット)ノ二体ヲ再度補足…再度、虐殺ヲ続行…』ギュイィンギュイイイィィィィン!!!

砂埃を掻き分けて虐殺兵器の丸鋸が未来羽いろの首元を的確に狙って数メートル先まで迫っていた。

「…危ない…!!」

無問題(モーマンタイ)。」パァン!

未来羽いろの邪を払う様に高鳴る喝采、その直後虐殺行為の頭上からガラガラと瓦礫の雨が降り注いだ。
崩れ落ちた瓦礫は瞬く間に虐殺行為を埋め潰した。

『左腕部ユニットノ破損ヲ確認…歩行ユニットニ破損ヲ確認…脳部(CPU)メモリノ大破を確n、確認認認...虐殺ヲ再k…』

「楽しい遊び相手だったよ、虐殺兵器(ジェノサイドカッター・サブ)。だけどもう僕は君と遊んでやれない。」
「君の壊し方が分かっちゃったからさ⌣̈⃝」バリィッ

未来羽いろが虐殺兵器にのし掛かって瓦礫を退かすように持ち上げると、そこにはとても人体とは思い難い肉の棒切れの様な何かがピクピクと脈打つ様が露になっていた。

「肉体機能の8割程度を機械に代替して造られた虐殺人造人間(ジェノサイドサイボーグ)ってところだけど、僕の断片(フラグメント)で部品を剥げばこのザマだ。」

「gy虐虐虐殺虐殺...ミーバネルチャ軍ニ依ル同志王国民ヘノ虐殺...ミバネ王国ノ繁栄ハ潰エ...虐殺虐殺虐虐虐冬将軍ノ虐殺ノ歩ミハ我々ヲ殺シタ我々ハ既ニ生キ永ラエタ死人ト___。」

「…可哀想。」グシャア

虐殺兵器だった"ソレ"がこんな体に成り下がる前の記憶を壊れたラジオの様に繰り返し、繰り返し話すその様がとても不愉快だった。
だから踏み潰した、まるで着色される前のフランクフルトの様だったその棒切れを。
幾人の人間をただ只管に虐殺してきたであろう兵器が憐憫を乞う様が酷く不愉快だった、だから私がこの棒切れに憐憫を向けてしまうよりさらに前に息の根を止めた。

「…それは慈悲か?泥棒猫」

「まさか。」

「ははっ、あの灰菜とか言った女の子と君は似てる様で実は全く違うのかな。」

「……。」


「あ、こんなところに、いたんだ、頭目(ボス)。」ピョコン

「おぉ…!!風船!!本当に来てくれてたのか!!」

九龍月華会の幹部だろうか、白眼を剥いた坊主の肥満男がこちらに駆け寄る。

(アジト)に帰る手筈、済んでる、から、急ごう、頭目(ボス)

「いやぁ〜!やっとシャバの空気が吸えるのか!!僕わくわくしてきたな。帰ったら早速タバコより対馬キメるわ!」
「そうだ、泥棒猫。行く当てはあるのかな?ここで遭ったよしみで途中まで送ってやるけど…♘」

「私の行く当て…」

ハッとして私はかつて茗夢だった肉塊を拾い上げた。

「…茗夢と居れるならどこでもいいや。」

「そうか…それじゃあ…」


九龍月華会(ウチ)へようこそ、夜宵エマ。今日から君も僕らの家族だ。」

―――
―――――…

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