真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 117

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相原ガガ美 2021/10/19 (火) 21:13:12

「あぁ、キミがあの時着信を掛けて私を焼き尽くす作戦を立てた張本人か。勇敢だね、その玩具(オモチャ)で私をどうするつもり?」

「警告です、今すぐ玲羽から離れて両手を挙げなさい、これ以上玲羽に危害を加えるなら、私はどんな手段も(いと)わない。」

「不死の断片者(フラグメンター)にその玩具を突きつければ脅しになると、本気で思って…」

二度目の銃声が響いた。
教祖の脳天を弾丸が貫き、脳漿が地面に散らかり落ちる。
教祖の身体が意思を失った隙におれは教祖の肢体を突き飛ばして大水木のすぐ傍まで駆け寄る。

「おれはどうやら"本日二度目"の助けてくれてありがとうをお前に言わなきゃ行けないらしいな。」

「バカ!そんなの後でいいからっ…今は逃げないと!玲羽、走れる!?」

「こんなズタボロ貧血骸骨男が走れるって思ってるのかよ…鬼畜すぎるだろ…」

「あーもう分かった、じゃあ肩貸すから」
そう言って大水木がおれに左腕を差し出したその時、おれの身体に突き刺さった物と同じ教祖の得物が、的を射るダーツの矢の如く大水木の二の腕を突き刺した。

「…痛っっ!?」

「大水木っ!?おいっ!?教祖お前…よくも…っ!!」

そう言って振り返るおれの頬を通り過ぎる得物の刃先が(かす)めた。

「やっぱりキミ達…退屈しないね、どうして互いの為にそう簡単に命を賭けられるの!?ねぇ!?もしどちらか片方が死んだらどういう風に殺意の矛先を私に向けてくれるかな!?ねぇッ…!?アハハ!アハ!」

何が可笑しいのか教祖は狂喜して高らかに嗤う。
トランプの札を持つように得物の束を両手に携えた教祖は今か今かと得物を振りかぶろうとしている。

「これは警告、これから私に背を向けて逃走するならこのナイフをどちらか1人の急所に突き刺して殺してあげる。」
「もし指示に従って素直に此方に立ち向かうなら、場合によっては見逃してあげる、どうかな?」

このイカレた教祖の提案には最早窮地に追い詰められたおれ達に選択権は無かった。
どちらか1人が犠牲になるくらいなら教祖と相対し、少しでも時間を稼いで救援が間に合う可能性に賭けた方がマシだ。

おれと大水木は一度互いに顔を見合わせ、互いに頷き合うと、同時に教祖に振り返る。

「それでは私達は…このピストルであなたを無力化し、そして拘束します…!!」

「大水木お前…左腕の流血…」

「大丈夫…!だから!私を信じて…!」

震える大水木の銃口を支えるようにおれは両手を銃身を握る大水木の手に添える、そして照準を教祖の脳天に定める。

「さぁさぁさぁ!キミ達の"希望"を私に見せてご覧…!」

おれ達2人目掛けて数本の得物が一直線に振りかぶられた。

「…ッ!!左手動けぇぇぇぇ!!!」

その時、大水木の左指は拳銃の引き金を引くことは無かった。
重厚な引き金を引くには余りにも多くの血を失い過ぎた。
だけどその瞬間、眼前には信じ難い光景が映し出された。


それは夥しい数の"鍵"。
地面に空いた異空の穴から、幾千の鍵の束が振りかぶられた得物を弾き返して、そのまま教祖の胴体を貫いた。

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