ミバなど

【SS】Requiem:channel / 116

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相原ガガ美 2021/10/14 (木) 00:02:02 修正

「教祖…!!何故、何故生きてる…!?」

「何でって簡単なコトだよ。私の断片(フラグメント)によって私の肉体は完全に破壊することが出来ないから、例えさっきみたいに細胞レベルまで全身を焼き尽くされたとしても傷ついた細胞1つでも残っているなら断片(フラグメント)がすぐに元の形状まで肉体を保とうと再生する、要は絶対に死なないから殺せないってコト。」

言われてみればそれは常識の理を超えた断片(フラグメント)の理の中では当然のこととして享受できた。
不死の断片(フラグメント)を持つ教祖が何故永きに渡って治安管理局の手から逃れられるのか、考えてみれば確かに簡単なことだった。
間違っていたのは茗夢の肉体を"跡形も無く"消し炭にしようとした大水木の方だった。

「何だか私、どこまで行っても頭の悪いエマちゃんよりどこまで追い詰められても秘策を繰り出す賢いキミ達に俄然興味湧いちゃったなぁ」
「ねぇ、次はどうするの?もしも私が死に(てい)のキミを殺そうとしてもまだ面白い策はあるんだよね?わくわくしちゃうなぁ…♪」

不味い、最悪だ。
俺は教祖の言う通り泥棒猫との戦闘で疲労困憊の死に体で、もうすぐ此方に大水木も駆け付ける。
このままだとおれも大水木も成す術無く教祖に狩られるだけだ、クソっ、救援はまだなのか…!?

「ねぇ…早く、早く早く早く!!見せてよ!!」

死の足音が刻一刻と此方に近づくのが聴こえる。

「あれ…キミは何でそんなに絶望的な表情を浮かべてる訳?キミの実力はその程度じゃないでしょ?ねぇ、どうして?」
「もしかして救援が来ることだけがキミ達に残されてる希望ってコト??」

「…だったら、どうするんだ…?」

「何それ、期待して損した…キミ達死ぬ程退屈だよ…」
「じゃあさ、キミ"走馬灯"って知ってる?人間は死の直前、今までの人生の中から自分が生き残る術を探す為に脳内を流れる記憶のスライドショー…なんて眉唾なんだけど、試してみる?」

そう言うと教祖は焼き焦げた法衣(ローブ)の中から得物を取り出して(おもむろ)にそれをおれの脇腹目掛けて突き刺す。

「っ!?、ぐあぁっ!!」

立つのがやっとだった俺の身体の均衡は唐突に加えられた猛烈な苦痛によって瓦解し、そのまま仰向けで地面に倒れ伏した。
教祖は俺に伸し掛かると、間髪入れずに得物を俺の身体の末梢へと突き刺していく。
(あられ)もなく街並みに響き渡る苦痛の悲鳴、地面のタイルを生暖かい鮮血が染め上げていく。

「アハハ、今のキミ、"親に玩具を買ってもらえなくて駄々をこねて泣いてる子供"みたいで超滑稽でウケるよ…どう?走馬灯見えた?」

死の今際に脳内を流れているのは大水木と過ごしていた日常の回想だった、こんな時に大水木かよ…と思ったがそりゃ北部街からの腐れ縁で幼馴染だもんな、という変な納得もあった。
酷く脆くちゃちな日常(ひび)を映し出す走馬灯を眺めていた俺が永久(とわ)の眠りを受け入れようと目蓋を閉じたその時だった。

銃声。
得物を振り下ろそうとした教祖の腕を貫通する弾丸。

「…それ以上玲羽を傷つけるな!教祖、茗夢遊戯(ノリユメ アソビ)
…!!」

怯えて震える頼りない銃口を教祖に向けていたのは、おれの走馬灯のフィルムを埋め尽くしていた他でも無い腐れ縁の大水木だった。

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