真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 113

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相原ガガ美 2021/10/05 (火) 22:32:52 修正

「なぁなぁ、夜宵エマさんよぉ…。」

「…急に何?馴れ馴れしくしないでくれる?」

「おれの右腕を見てくれよ、ほら、お揃いの自傷痕。この断片(フラグメント)が目を覚まそうとする度におれはこうやってこの力を封じてきた。」
「おれは元々『親から貰った体を自ら傷つけるなんて〜』っていうお節介な倫理観は無かったから別に大して何も思わなかった、だけどどうしてかリスカの後は心の中がドス黒く染まるようなそんな最悪の気分になる。」

「へぇ、そう。別にキミの自傷行為について特に興味は無いんだけど。」

「でもおれはお前のその自傷行為の理由について、興味がある。」
如何(どう)して何ら不幸な環境で生まれてこなかった少女が、自らの手で自分を不幸に至らしめているのか────。」

「五月蝿い!!五月蝿い五月蝿い五月蝿い…。」

どうしていずれ不幸になると分かってい酒やクスリに身を堕としたのか、その浅はかさについて。純粋に疑問なんだ、だから説明してほしいな。」

「あ〜〜もう五月蝿いな!!!知ったような口聞くんじゃねぇよ!!私の何もかもを知らねぇくせによ!!!」
「…ははっ、じゃあもう何も知らないまま死んじゃえ、死ねばいいんだ。テメーみたいな偽善者この世から全員消してやるよ。」

泥棒猫の瞳は完全に憎悪と狂気に支配されて正気だった頃の面影は見る影も無い。

泥棒猫は前傾姿勢で地に四肢を着け四つん這いになり、全身の毛を逆立たせる程に唸り始める。
文字通り泥棒猫の様に、否、狩りで獲物を仕留める女豹の様に。

常闇の夢心地(クロ・ノ・スタシス)、狩猟形態───『過剰闘夜(オーバー・ドーズ)』」
「ここで死ね、そしてあの世で懺悔しろ。」

泥棒猫の刹那の跳躍、そしておれの腹部を泥棒猫の両手が貫く。

「…ぐふっ…ゲホァっ!!」

止めどない血反吐が流れ落ちた。視界が朦朧とする中で泥棒猫が勝ち誇ったようににんまりと笑みを浮かべるのが見える。

「…バーカ、所詮骨を出すだけの断片(フラグメント)で夜の私に勝てる訳が無いんだっつーの……って、あれ、ちょっと…なんで…手が…」

「お前の手をおれの体内の骨で塞いだ、これでお前の機動力は封じた。」

「…だからって、何ができるっていう訳!?」

「分かってるだろ?」
「─────"骨を出すだけ"だ。」

逃げ場を失った泥棒猫の躯体をおれの全身から突出させた骨の刃で貫いた、それはまるでヤマアラシの様に。

「…ッ〜〜〜〜〜〜〜!?」

泥棒猫、夜宵エマの声にもならない断末魔が辺り一帯に響き渡った、夜宵エマは気を失って眠る様にその場にへたり込んだ。

「おれには嫌でもお前の気持ちは理解できるよ、夜宵エマ。」


「だからもうこれ以上、不幸にならないでくれよ。」

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