「アハハ、大ピンチって感じだねエマちゃん。助けてあげようか?」
「……助けて、茗夢。」
泥棒猫は頭上に現れた教祖に懇願する。
茗夢は彼女の願いを聞くと、一瞬欲に溺れた人間の末路を嘲るように悪魔の様な冷徹な微笑を浮かべたかと思うと、今度はアパートの屋上から一歩空中に歩んで地上に舞い降りる天使を気取るようにゆっくりと、海斗を着地目標にして降下していく。
「茗夢様…どうして…どうしてあなたが…」
海斗は先程までの冷静沈着な様子とは打って変わって、かつての主君だった教祖の登場に酷く動揺している。
「あの時あなたが革命に参加して国家転覆を成功させていれば!俺はこんな悪趣味な首輪を付けられてスイッチ1つで命を管理される惨めな飼い犬には成り下がらなかった!!」
「それをどうして…こんなにも堕落した売女の罪人を庇う!!」
我を失った海斗が降下する茗夢目掛けて一心不乱に跳び掛かる。
「それはね、海斗クン」
「革命なんてただの気まぐれな前戯に過ぎなかったからだよ。」
茗夢は目前まで迫っていた海斗の頭部を造作もなく
「がぁっ…!?」
茗夢は何事も無かったかのように地に足を着けるとその場に立ち尽くしていたおれに語り掛ける。
「2つ質問するよ、まずこの前の革命の時るるたちゃんを捕まえたのはキミ?そしてこの場の局員の中で一番偉いのもキミ?」
「あぁ、どっちも紛う事なくおれだよ、そしておれからも質問する」
「教祖、お前は何故ここに来た?お前の目的はなんだ?」
「きみもご存知の通り先の革命の失敗でアザミの信徒達は国家の犬達に追われる身になってから散り散りに、統率も取れなくなったアザミは実質的な崩壊を終え、不死身の教祖も今は独りぼっち」
「だから私は退屈しない話し相手が欲しいの♪それが偶然君達の標的の
さっきの質問と言いアザミの末路といい茗夢は恐らく何らかの情報網を通じて治安管理局の動向の大部分を把握している。
確信は無いが、管理局内に何らかのコネ…
「凄いねキミ、いや
「…!?」
コイツ…どこまで知ってるんだ!?
「でもね、エマちゃんの
「さて、夜の
茗夢がそう言い終えておれは我に帰って泥棒猫の方を確認する、先程まで
次の瞬間、腹部に猛烈な衝撃が加わりおれの体は遥か後ろの建物の壁面まで突き飛ばされていた。