真昼の迫真ランド

【SS】Requiem:channel / 107

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ちゃむがめ 2021/09/12 (日) 00:06:15 修正

部屋があったのは2階、落下時の衝撃でも大抵は命に別状の無い高さだ。
しかし今闘っている泥棒猫(相手)は落下後に追撃を与えてくる可能性がある。
おれは両腕を前に構えて着地姿勢を取り足の爪先から指先が地面の感触を捉えたのを合図に前傾姿勢でアパートの反対側へと駆け出す。
背後ではおれの着地した辺りからコンクリートを砕く鈍い音が聞こえる。
恐らく断片(フラグメント)によるドーピングで全身を強化しているのだろう。
おれの推測が正しければ泥棒猫はその脚力ですぐにおれに追いつける、非常に不味い状況だが。

仮面変身(カメンライド)─────『緋車疾進(ドライブ)。」

前方から颯爽と現れた名も知れぬヒーローはおれの頭部スレスレにすれ違い背後から追いかける泥棒猫に飛び蹴りをお見舞いした。
振り返ると蹴り飛ばされた泥棒猫の躯体はアパートの壁を崩壊させる程にめり込んでいて、現れた全身赤色のコスチュームを身に纏ったヒーローはさぞ自慢気な様子で倒した泥棒猫(悪役)を眺めるように堂々とした姿で突っ立っている。

「その姿…お前……海斗か?」

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「えぇ、大水木准将は無事だったので加勢に駆け付けました。」

気づけば陽も傾き街並は夜の片鱗を見せ始めていた。


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「玲羽少将、泥棒猫の断片(フラグメント)は?」

「恐らくはシンプルな身体能力の強化だ、それ以外は知らん!」

「成る程、ですが俺の断片(フラグメント)であれば難無く対応できる程度でしょう。」
「俺が矢面(やおもて)に出ます、玲羽少将は後方援護を。」

そんなに功績が欲しいならくれてやるよ。
相手は体術もズブの素人の身体能力強化の断片者(フラグメンター)の女が1人。
対してこちらは断片(フラグメント)を秘めたおれと断片(フラグメント)を使い熟す海斗、形勢は完全に逆転した。
このままいけば順当に泥棒猫の確保も遂行できる。
そう思っていた、その時だった。

「アハハ、大ピンチって感じだねエマちゃん。助けてあげようか?」

おれ達の大捕物(おおとりもの)を嘲るように嗤う声の主は先程おれ達が捜査していたアパートの屋上に鎮座していた。
屋上からおれ達を見下ろして憎たらしく忌々しい微笑みを浮かべているのはレートSS:教祖、茗夢遊戯だった。

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