知佳
2023/11/29 (水) 16:37:49
be2e9@909a7
家の裏手の境内で逢引する幾世
壬の神が鎮座する壬神社 (みずのえじんじゃ) は泉の村の外れの小山の頂上にある。 幾世の生家である坂井家は、この小山の一角にある。 「いまいかんとよ、ウチのんがまだおるけん」
電話の向こうで盛んに逢いたがる漢を、なんとかなだめすかす幾世。
「ウチのんて……もう、決まったとか? あん夜やったとか?」
「そげんこつ……どうすりゃよかと……」
漢に責められ、幾世は半べそになっていた。
彼女には言い寄る男は多数いても、それらすべてが躰目的。 坂井家や幾世のことを案じ、嫁にというのではない。 その点でいうと、電話の向こうの漢は、何故幾世にだけ目が向くのか、不思議でならないほど女からモテた。
「…また、電話する。 今日はあかんとよ。 あんヒトが近くにおるけん……」
電話を切りたいが、向こうが切ってくれないものだから、見つかってはと懸命に取り繕う幾世。 そのうち手持ちの小銭が切れたのか、ビーッという警告音のあと、先方から切れた。
電話の内容からすれば、一方的な交際の申し込みに終始していたにもかかわらず、幾世は心も躰もその気になってしまっていて、電話が切れても心ここにあらずだった。
https://letsgochika.jp/blog-entry-19713.html
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