知佳
2023/11/28 (火) 18:41:15
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帰って来た美咲
嵐の夜の小窓に映る自分を見ながら、美咲はぼんやりと考えていた。 いくらお金があったからと言って、鰐浦の顔役だからと言って、うんと年の離れた、それも、家庭持ちの御手洗の妾になれたからといって、決して将来安穏に暮らせるとは思えなかった。お見合いを兼ねたような合コンに誘われても、まったくその気になれないのはなぜだろうと。 鰐浦に帰ろうと決めた以前からそれはわかっていた。
翔太のことが忘れられないからだ。 鰐浦に戻って、もうそろそろ半年余り過ぎたが、磯に出て漁をしているときも、漁の合間を縫って御手洗に抱かれているときも、片時も彼のことを忘れたことが無かった。
酔った御手洗の手によって、コヤに連れ込まれ、硬いヒジキの上で躰をひらかされていると、決まって翔太とのことが蘇るのだ。 優しかった翔太の息遣いが、肌の温もりが、汗と草と土が混じったような男の匂いが、眩しい笑顔が、優しい声が、ペニスの感触が。
「艶っぽうなってん評判、か……」
こんな艶やかな躰にしたのは、おそらく御手洗に違いなかった。 しかし、きっかけを作ってくれたのは翔太だ。 御手洗はその翔太に嫉妬し、寝取っただけなのだ。
美咲はガラスに映る自分の背を向けた。 そして大きなため息をついた。
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