知佳
2023/11/10 (金) 14:29:05
b44c5@909a7
騙して連れてこられた……であろう比田勝の夜の蝶
その夜出された食事は表向き料亭と名乗るだけあって確かに美味しく、加奈子は食が進み、普段の二倍ほども食べてしまった。 地元で獲れたというだけあって、天然ぶりは脂がのって甘く、磯に行けばそこいらにゴロゴロ転がってるというサザエに高浜が食べさせてくれたアワビ、加奈子は一口一口かみしめるように味わった。
夜ともなると昼間と違い料亭は、なんだかいうアニメに出てくる料亭のように灯りが点いて賑やかで、でも宴席に花子は駆り出され加奈子は独りぼっち。
女将の勧めで歩いて港まで出てみた。 昼間見ると何の変哲もない、水深が浅い港だが、夜ともなれば海面を夜光虫が彩る。 隅田川の花火を思い出し、しばし見とれた。
翌日は朝から雨だったので、加奈子は多くの時間を花子とレストラン喫茶美松に出かけ食事と飲み物をとり、それが終わると評判のバー桂を中心とした飲み屋街を花子の案内で見て回った。
なるほどと思えたのはその道幅、この時代にあって人力車程度しか通れないほど道幅は狭く、しかも建物たるや外側は鰐浦の民宿同様バラック建てなのだ。
「ねえねえ花子ちゃん、こんな場所に勤めるお姉さんたちって……ひょっとすると……」
「うん、そうだよ。 多分ね。 ウチと同じ、本土のどこかからか連れてこられた人たち」
こともなげに言ってのける。
https://letsgochika.jp/blog-entry-19680.html
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