知佳
2023/11/09 (木) 20:23:29
e5226@909a7
布団部屋に、女中のような娼婦が閉じ込められていた
自衛隊の輸送班、工藤が探してくれた旅館風な宿の、布団部屋 (布団などを投げ入れておく物置のような部屋) と思われるところに加奈子は部屋を宛がわれた。 正当な料金を払ったにもかかわらずネズミでも這い出るんじゃなかろうかと思えるような部屋にだ。
建物は全多義的には広いものの、V字に切れ込んだ谷の一番奥に建っているため平地に乏しく、斜面に沿って建てられており、加奈子が止まった部屋は右側の斜面の最も低い位置にあった。
他にもっとましな部屋はないだろうかと、宛がわれた部屋を出て斜面の右側の建物内を歩き回った。 だが、残念なことに宴会場以外、ほぼ似通ったような部屋ばかりだった。 このあたりではどうやらこれが普通らしい。
加奈子に宛がわれた部屋のほど近いところに従業員部屋があった。 室内は派手派手しく飾り立てられてはいるが、よく見ると中身は加奈子のそれと似通っていた。 違う点は、加奈子は自由に外歩きできるが、従業員らしき女性は拘束に近い状態で部屋に据え置かれてるようなのだ。
「花子、お客さん」
帳場らしきところにいた女将さんらしき女性が、その部屋にいた女に声をかけた。 呼び声が聞こえた直後に、身なりはそれなりの格好はしているが、どう見てもお客さんとは沖合が時化ていて港を出ることが出来なく、比田勝港に錨を下ろしていたイカ釣り漁船の船員らしいのだ。
「は~い、今行きます~」
九州訛りではなく、標準語で返答する女の子。 部屋を出て行った女の子は斜面の左側の部屋群にうれしそうに向かった。
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