知佳
2024/05/17 (金) 18:01:52
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拐かし (かどわかし) 第七話
遊女がせがみ、客がつれないこたえを返す。 そんな遊女と客の会話を傍で聞いているうちに、なんとなくお家の様子が分かって来る。あるとき、もしかしたらという疑念が起きた。 どうあっても確かめずにおれない。
新次郎の盃に銚子で酒をそそぎながら、何気ない口調で水を向けた。
「お家のご商売はなんですかい」
「材木屋さ。 もっとも親父は金貸しもやってるがね」
「本所の、長崎橋のあたりとお聞きしましたが…」
「そうさね」
大店の跡取りと名乗ったからだろう。 心なしかふんぞり返った。
「もしかしたら…、 屋号は山鹿屋さんではございませんか」
「なんだい。 おまえ、どうしてそんなこと知ってるんだい」
孫右衛門はここぞとばかりにかしこまってこたえた。
「へっへっへ、なにね。 以前、別な商売をやってたときに、お声かけ頂き、お買い上げいただいたことがございます。 確か立派なお店だったと覚えておりますが。 そうそう、ええっと…。 たしか、旦那は…」
そこから先はとぼけた。
女郎を買おうかという歳になって、いまだに泊まりはどうのと口出しをする。 さぞかし父親を嫌ってるに違いないと思われたが、
まさにその通りで、新次郎は嫌な顔をし
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