知佳
2024/05/16 (木) 17:47:36
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拐かし (かどわかし) 第六話
そんなすさんだ生活を送ってるさなか、やくざ者と揉め事を起こした。 連中は必ず大勢で押しかけて来るし、執念深い。孫兵衛はほとぼりが冷めるまで吉原に身を隠そうと考え、海老屋に若い者として雇ってもらった。
十五歳まで商家の跡取り息子として育ち、寺子屋にも通っていたため、きちんと読み書きできるし、算盤も達者だった。
孫兵衛は海老屋で重宝がられ、今では若い者の筆頭だった。
楼主の信任も厚く、遊女からは「まごさん」と呼ばれ、何かと頼りにされていた。
そんなときに、山鹿屋の息子の新次郎が客として現れたのである。
吉原は上級武士、或いは豪商のような資産家でもない限り高くて上がれない。 下級武士や一般庶民は良くて岡場所、それもかなわないと千世がやっていたような夜鷹を買う。
その吉原にである。 孫兵衛は女郎屋で遊んだとはいえ、それは岡場所。 吉原には花魁道中を見学したり冷やかしに行くことは出来ても上がるなどということは出来なかった。
入り浸りなどと格好をつけたところで所詮切見世、良いと襖で仕切られているが、普通なら障子、更に悪くなると衝立で仕切られているところで雑魚寝のようにし済ませた。
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