知佳
2024/05/10 (金) 20:51:31
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四畳半での謝礼 ~失ったものの大切さ~
畠山紫野は何度も自宅に舞い戻っていた。 夫の和義から何か連絡が入ってないかと確かめに。 が、その都度失望させられた。女と違い男は、一旦こうと決め飛び出したら、目的を果たさないまま帰るなどということは滅多にない。 目的を持った瞬間からはるか彼方を見てしまうからだ。
あかりも見果てぬ夢を追ってるようでそこは女。 忘れ去られてしまわないか心配になり幾度も、四畳半におばちゃんに見つからないよう物陰に隠れながら立ち寄った。
四畳半からも哲也からも、いや、この界隈からも美香の気配が消えたことを確かめた上で、舞い戻っている。 美香がいなくなれば入り込む余地があるからだ。
紫野が立ち寄った畠山邸のポストには、夫の所業を示す数々の請求書と不在通知書が溜まっていたものの、玄関も部屋も彼女が出て行った当時のまま、何も変わっていなかった。
職業柄、妻が今どこで何をしているか常にアンテナを張っているだろうから当然、感づいている…はずなのだが…。 だからこそ勝手にお金を借りまくるような阿漕なことだってできたのだろう。 まさしく躰を張って払えということなんだろう。
それらを目の当たりにした瞬間、紫野ならぬあかりは怒り心頭四畳半に取って返している。
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