知佳
2024/05/06 (月) 11:09:59
b41de@909a7
ありさ 土蔵の濡れ人形 (改) 第三話 「卑劣な罠」 Shyrock作
ありさは生まれてこのかた茶会というものを一度も見たことがなかった。 以前庄屋の屋敷でときおり開かれていたようだが、貧しい家庭に育ったありさにとっては縁もゆかりもなく遠い世界の話であった。(茶会に使うお茶碗ってどんなものだろう?ふつうの湯呑みとどう違うのかな?)
どのような器なのか、一度見てみたい。
(眺めるだけなら構わないだろう……)
関心が高まったありさは、茶碗を茶室に運んだあと桐の箱をそっと開けてみた。
すると箱の中にはさらに小さな桐の箱が五つ入っていて、箱と箱の間には綿や紙が詰められている。
揺らせても傷まないように工夫しているのだろう。
その中の一つを開けてみた。
大切そうに布で包まれ、こちらも四隅に綿が施されている。
ありさは包んである布を解いて茶碗を取り出した。
(うわぁ、すごい……これがお茶会用のお茶碗か……)
ありさが手にした茶碗は、意外にも手になじみやすく温かい感じがした。
手捏ねして焼いてあるのか、見た目は不安定な形をしているが、どっしりとした安定感が漂っている。
ありさは初めて見る茶碗に目を輝かせた。
「へぇ……これがお茶会に使うお茶碗か。家で使っていた湯呑みとは全然違うなぁ。こんな上等なお茶碗でおとんやおかんにお茶を飲ませてやりたいなぁ……」
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