知佳
2024/05/02 (木) 19:50:13
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四畳半での謝礼 ~女は窓の外を眺めつつ、新婚時代を想い出していた~
「ねえキミィ、すまんが娘をよろしく頼むよ」 畠山紫野は和義の斜向かいで父と並んで座り、将来について話し合っていた。和義と紫野の父 河野三郎は東北某県警の先輩・後輩にあたる。
河野三郎が在籍中、後輩の和義には何かと黒い噂がついて回った。 それを三郎はいちいち庇い立てし、揉み消して回った。 その気持ちを汲んでほしいと願い、実の娘を周囲の反対を押し切って嫁にやった。
「ところで和義くん、ウチの紫野は嫁としてちゃんと務まっているんだろうね」
本心は、これほどまでに気にかけてやってるんだから、少しは娘のことも考えてほしいとの願いを込めたのだが、
「そりゃあ~もう、おやっさんの娘ですから、言うことないですよ」
娘の様子や職場の噂とは真逆に、すっかり女房の尻に敷かれてる風な言い回しをしてきた。
「はっはっは、和義くんも甘いなあ」
自分が女房の死に目にも会えないほど足を棒にして働いて貯めた蓄財を、そっくりそのまま分け与えてあげたんだからと言いたかったが、それもやめた。 ところが、
「そうだっ、 おやっさんも俺らと一緒に住んだら如何ですか」
突拍子もないことを言い出した。
「和義くんの気持ちは有り難いんだがね、儂は独り暮らしが性に合ってる。 今更家族で暮らすなんて…そりゃあ~有り得んよ」
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