知佳
2024/04/15 (月) 19:20:52
70e25@909a7
四畳半での謝礼 ~思想改造所に送致された美香~
終始無言のまま、まるで申し合わせたかのようにふたりは海岸に向かった。 哲也がそこに行く目的は流れ着くであろう禁制品を見つけるため、が、美香の目的は一見同じように見え、また別のところにあった。 離別である。
掟を破って哲也に傾いてしまってる。 本来なら通いが建前の四畳半に、居場所がないという理由で居座り、謝礼なるものを繰り返していた。
四六時中くっついて離れないとなると、有馬だけで販売網を取り仕切れるわけはなく、かといって美香は哲也の手前薬物に手を出すわけにはいかない。
惚れ、役目を投げだしてしまった以上罰を食うのは目に見えていた。 問題はどのあたりで迎えを寄越すかだった。
美香はだから、海岸に現れるであるう迎えの船を、万が一彼らが上陸し、哲也に危害を及ぼすようなら、命を盾に守り抜こうと探していた。
(あの漢たちだけで、あんなに上手に誑し込めるわけない…きっと哲也が手を回しておいてくれたんだ)
漢たちの体力が尽き、あの人妻も満足しきると各々自分勝手に部屋を出て行った。 独り取り残されたにも関わらず、その空間を、一体どこに潜んでいたのか哲也が現れぴったりと埋めてくれた。
「美香さん、初めて出会ったときからず~っと好きだった」
「ぷっ、 ナニよ今更」
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