知佳
2024/03/12 (火) 08:56:37
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四畳半での謝礼 ~妖艶に微笑みかける人妻~
キキキーッという音がし振り向くと、時代に取り残されたような車が鼻先をかすめ通り具ぎていった。 「馬鹿野郎、あぶねえじゃねえかあ~~~」 怒鳴り上げたものの、もうその時には車のナンバーなど確認しようもないほど遠くに逃げ去った後だった。「危なかったわねえ、大丈夫でした?」
ひょっこりと家の隙間から女が現れた。
哲也は海岸線で拾ったものをそこら中にぶちまけてしまっており、声をかけてくれた女は、辺り一面に散乱しているそれらをひとつひとつ拾い上げてくれている。
「ありがとうございます。 あいすみませ…」
自分でも慌てて落としたものを拾おうとし、女が拾ったものを手渡そうと近づいてきたのを顔を上げ見て、思わず口をつぐんでしまった。
そこにいたのは、あの公園の女だったのだ。
「その節はどうも…」
丁寧に頭を下げた女の長い髪は、肩から胸へと滑った。
「はあ…ここいらにお住まいだったんですか…」
「…ええ…まあ…」
言いにくそうだったので、哲也は拾ってくれたものを受け取るなり、自分が先に立って通りを渡った。 渡り切ると右に折れた。 見ると女は後ろを付いてくる。
こちらが歩を緩めると、同じように緩めると言った風に、何処までも付いてきた。
年齢からするとアラフォーに近かろうと思われた。
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