知佳
2024/03/03 (日) 17:36:04
89907@909a7
薄暗がりの中から現れた人妻
うだるような暑さが続く梅雨明けの午後九時前、中谷哲也は港方面から歩いて駅方向に向かっていた。小さな交差点を右折し、道なりに1キロばかり歩くと駅に着く。 交差点の脇にはパチンコ店があった。 問向かいにはコンビニもあるが、この交差点を過ぎるとしばらくは店らしきものはない。
お金さえあればパチンコをやりたかったが、情けないことに無一文に近い哲也には、パチンコをする余裕などなかった。 すきっ腹を抱えてはいるがコンビニなど論外だ。
このパチンコ店には知り合いの女が入り浸っている。 頼めばお金を工面してくれないこともない。 しかり、借りたからといって返す当てなどない。
哲也自身職にあぶれるどころか、パチンコに入れあげ、今は食にすらありつけなく、仕方なしに警備のアルバイトをしていた。
炎天下、蒸し風呂状態の中、ひっきりなしに行き交う車を、苦情を言われながらもペコペコ頭を下げ誘導する。
そうやって得たお金で街外れの廃屋のような1Kを間借りし、インスタント食品を口に放り込むのがやっとという状態になっていた。
高校を卒業し、最初に勤めたのが鉄工所だった。 だがそこで、先輩のいじめにあい、いやになって飛び出し、あとは職場を転々と変える生活を繰り返していた。
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