知佳
2024/02/27 (火) 15:24:22
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息子の友達にごちそうをふるまいたく、キッチンに立つ優子
「うお~、それいいじゃんいいじゃん」 食卓テーブルを挟んで賑やかに語り合う男の子は大地の同級生で数馬といった。 彼らは受験の息抜きにどこかに出かけようとしていた。父親の多聞は一度として大地を、キャンプや釣りなどに連れ出したことが無い。 それだけに数馬がどこかに出かけようと誘ってくれた時、後先考えないで一緒に出掛ける気になったようなのだ。
(大地のヤツ、あんなに通い詰めた加奈をほっといていいのかしら)
優子は、妹の加奈と息子の大地が良い雰囲気なっていることに気付いていた。 懸命に通い詰める加奈を見てると、なんとなくほんわかみたいな気持ちになる、漢は年上と決めつけていた気持ちが揺らぎ始めていた。 そこに数馬の来訪である。 夫を散々腐しながらも、自らも何ら母親らしいことをやってこなかった。
その優子が、何故だか数馬を気に留め始めたのだ。
「大地、数馬くんにお茶は何がいいか訊いてくれない」
テーブルの、優子側で優子に背を向けながら座っているのが数馬だというのに、まるで取ってつけたように大きな声で我が息子に訊いたのだ。
(ううん? お母さん、数馬に気があるの? 自分で訊けばいいじゃん。 ああめんどくせ)
大地がくさすのも無理はない、優子は先ほどから、どう声をかけたものかと、数馬の背後を右に行ったり左に行ったりと、ウロウロしまくっていたからだ。
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