知佳
2024/01/28 (日) 11:07:11
b60bb@909a7
長編官能小説 『加奈子 悪夢の証書』 第1話 Shyrock作
仏壇の前で手を合わせ黙祷する一人の女性がいた。 色白で息を呑むほどの美貌を携えていたが、表情はどこかしら暗く憂いを滲ませていた。(あなた、どうして私を1人残して死んでしまったの?しくしく……)
女は六車(むぐるま)加奈子と言う。
二カ月前、夫信一は白血病が元で37歳で早逝し、加奈子はまだ32歳と言う若さで未亡人となってしまった。
愛する夫との間にせめて一人だけでも子供を授かっていたらと、今更ながらに悔やんでみたが今となっては後の祭りであった。
信一は小さいながらも宝飾関係の会社を営んでいたが、ここ3年ほどは不況の煽りを受け営業不振に陥っていた。
葬儀以降、加奈子のもとへ会社役員が相談に訪れたこともあり、リーダーを失った企業の戸惑いを露呈していた。
そんな中、四十九日の法要も無事に終えた加奈子は亡き夫に祈っていた。
(あなたの作った会社、どうすればいいの?重役が相談にくるけど私にはどう返事すればよいか分からない。ねえ、教えて…信一さん……)
いくら問いかけても、答えなど返ってくるはずがない。
仏間には線香が立ち込め、凛とした静寂が空間を支配した。
その時、玄関でチャイムの鳴る音がした。
「あら、誰かしら・・・?」
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