バカジニスト大喜利

【回答A・i】
今しがたおばあちゃんの葬儀が終わった。
無口でひねくれたところもあったけど、僕にとっては優しいおばあちゃんだった。
しかし、亡くなる数年前から少しボケ始めていたようで徘徊癖があった。いつもいつも「墓参りに行ってくる」と言ってはなかなか帰って来ず、家族を心配させていた。時には何日も何週間も帰って来ずに、警察に捜索願いを出したこともあった。もうこれだけ見つからないとなると…と諦めたところでひょっこり帰ってきては、「おばあちゃん、どこ行ってたの!?」と聞いても何も答えずに呑気にお茶をすすったりしていた。
そんなおばあちゃんの遺品を整理していた時に、あることに気付いた。
おばあちゃんのパスポートを見ると、異常なほどに海外に出掛けていたのだ。マイルも世界一周出来るほどに貯まりまくっている。それも、ボケ始めた頃とピッタリ重なる。
実はおばあちゃんは、何日も家に帰ってこない間に海外旅行に出掛けていたのだ。どちらかと言えばインドア派で無趣味なおばあちゃんが、どうしてそんなに海外に…？
その謎は、僕の大叔母でおばあちゃんの妹の和江おばちゃんが知っていた。おばあちゃんは、昔世界を股にかける凄腕の殺し屋だった。そして、常にターゲットに敬意を忘れず、殺した相手のデータは一切頭の中に入っていた。人生の最晩年に自分の死期を悟ったおばあちゃんは、ターゲットたちの冥福を祈るためにそれぞれの土地へ出掛けていた。
そう、おばあちゃんはボケてなどいなかった。本当に「墓参り」に行っていたのだ。
ひねくれ者で無口なおばあちゃん。
「義理だけは欠かすな」が口癖のおばあちゃん。
僕の大好きなおばあちゃん…
いつか僕もおばあちゃんのように世界中を飛び回って見たいと思う。
おばあちゃんが墓を「参る」ことで貯めた「マイル」で…