ちょこん(FLO)
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2018/10/29 (月) 23:51:35
02-06 目が覚めた
緊張のせいだろう。何度か目が覚めたが、少し眠ったおかげで心も休めたようだ。
見回してみると360度地平線ばかり。
建物や山に囲まれて育ったせいか、これだけ広々としたところに置かれると自分の存在がちっぽけに感じてくる。
「おはよう絹枝」
「おっちゃんおはよう」
絹枝は自身で言っていた通り、寝ずに起きていたようだ。
「先ずは顔あらいなさいよ」
「どうやって?」
「手を出して」
両手を前に出すと、何もない空間から水が落ちてくる。
「おっと、これってどこから出したんだ?」
「気にしないでいいよ、顔あらっちゃいなよ」
「お、おう」
YOUと言われそうだが、気にせず顔を洗い、口をすすぐ。
「あー冷たいな。雪解け水みたいだけど?」
「おっちゃんは気にしないでいいんだよ」
「んーそうか」
食事か、まだバッグに何か入ってるかな。
「なんも、ないか」
「自給自足だね」
「と言われてもな……」
何もないんだ。見渡す限り何もない。生き物も植物も山もない。海も湖も川もない。
「飯は出せないんだよな?」
「うん。出せなくもないけどおっちゃんが食べられるかどうかもわからないし、素直に獲物を探した方がよいよ」
「しゃーないな」
東へ進むんだな。東ってどっち?
「絹枝さん。どっちへ進めばいいんだ?」
「んとね、あっちに向かって進んで」
「あっちねぇ」
絹枝が指差した方にも、何もない。目印もない。
「心配しないでいいよ。ご飯もすぐとは言わないけど、あっちにあるから。多分」
「多分って……」
とは言え闇雲に間違った方へ進むよりは、絹枝が示す方に進む方がまだマシなような気がする。
あまりない荷物だが、バッグに仕舞い俺たちは歩き始めた。
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