昨日見た月は双子星だったか

01-03　現状分析する

　さて、自分の居るところもわからない、連絡を取る手段もない。おまけに煙草もライターもない。何もない。

　これが罰ゲームなら何をすれば良いんだ？ただの拉致じゃないか。
　どっかでデブでヒゲのおっさんが「うひゃひゃひゃ」とか言いながら笑ってるんじゃないよな？

　体感で30分ぐらい過ぎただろうか。夜が明ける気配も、誰かが来る様子もない。

　このまま朝まで待てば周囲の状況はわかるだろうが、果たしてその後どうすべきか、全く出口が見えない。

　よし、ここで現状を分析してみるか。

　俺の名は猪口一太郎（ちょこいちたろう）。皆からは「ちょこん」って呼ばれてる。日本で五千人ぐらいいる猪口さんの内の一人だ。

　年齢は40代。フリーランス。何のフリーランスかは聞くなよ？色々面倒だからな。別に布石じゃないぞ。

　勿論男だ。家族は居るが遠く離れているし、ここ20年メールすらしていないので、生きているのか死んでいるのかも分からない。天涯孤独ってほどでもないがそれなりに孤独な人生だ。

　俺が死んだところで家族は大して悲しむこともないだろうし、むしろ口座の金をみてほくそ笑むかもしれないな。

　現状分析だったよな？なんで自己紹介なんてしてるんだろう。俺も歳かな。