shigeta 様
古典球のエージングについて個人的な考えを書いてみます。
長期間通電されずにいた直熱型の古典球は、重力によって電極等にストレスが掛かった状態になっています。
また、フィラメントがスプリングによって吊られているのでここにもストレスが掛かっています。
ストレスが掛かった状態で規定電圧をフィラメントに加えるとストレスが解放されフィラメントの断線リスクが高まります。
更にはフィラメントにコーティングしてある酸化被膜が剥離する可能性もあります。
これを回避するには1時間程度の時間を掛けて徐々にフィラメント電圧を掛けてゆくのが良いでしょう。
私はチューブテスタを利用して段階的にフィラメント電圧を上げてゆきます。
規定電圧に達したらさらに1時間程度通電を続けます。
一度入念にフィラメントエージングを行えば規定電圧を加えても断線や剥離のリスクはかなり減じるでしょう。
フィラメントのみに通電してのエージングでは管内の真空度の低下が起こります。
これはフィラメントの点灯のみでは真空管の温度が十分に上昇せずゲッタが活性化しないためです。
一方この中途半端な温度下では電極等から不純物がイオン化して飛び出してくるため真空度が低下するのです。
イオン化したガスをゲッタに吸着させるためにはプレート電流を流してのエージングが必要なのです。
今回のチューブオーディオラボ製のコンパチアンプは定格の8割程度の動作ですので古典球にあまり負担を掛けることなくエージングすることができます。
私が提供する古典球はフィラメントの初期エージング済ですから後は通常動作でのエージングを行えばOKなのです。
定格の100%動作で設計されたアンプではエージングしない方が良いでしょう。
真空度が低い状況ではプレート電流が規定以上に流れてしまうため過負荷の状態となり球を破損させるリスクが高まるからです。