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【ポケモンSS】いつかのできごと

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建ったら書く

ガブ 0e54ab4f02
作成: 2016/11/24 (木) 20:55:32
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ガブ 0e54ab4f02 2016/11/24 (木) 21:11:50 修正

prologue

――振り返れば、楽しい時もあり、険しい道もあった。
けれど、素晴らしい旅だった。

故郷に帰ってきた今でも、時折目を閉じて、冒険の日々を思い出す。

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その度に、白衣を脱ぎすて、スポーツウェアを着ようと試みる。
その度に、リュックを引っ張り出してボールやら薬やらを一気に詰め込む。

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暫くして、私は椅子に凭れ掛かる。
『旅をしたい』と言う心に反し、体は震えだす。

体は、もう追いついていないのだ。
老いぼれた体を必死に動かそうとするが、骨は軋み、口は震え、腹の奥の方から何かが蠢き、何かが込み上げてくる。

ふと、机の上に置いてある、セピア調の古ぼけた写真が視界に入る。

あぁ……
私は、何かに蝕まれ、頭痛が絶えない頭を必死に回転させる。

節目というのか、潮目というのか。
とにかく、今が"それ"なのだ。

2

The first chapter journey

「ふっ、ふっ!」

俺は、どでかい段ボール箱を小走りに運んで行く。
重いんだよ……何が入ってんのか、ってくらい。
しかも、中から声がするし。

「じいちゃん! 運び終わったぞ!!」

「おぉ、ゼレナー。ご苦労じゃったな。」

この人は俺のじいちゃんで、オーキド・ユキナリって言うんだ。
有名な学者で、世界にも通用するほどの技術を持っている。

「それでは、メラーを呼んできてくれ。」

「はぁ!?」

メラーは俺の幼馴染で、今日、俺と一緒にポケモンを貰う、いわば『ライバル』だ。

3

「まー、分ったよ。呼ばないとポケモン貰えないんだろ。」

「当り前じゃよ。」

じいちゃんは、そう、笑顔で言い放つ。
……

行ってきますか。

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4
ガブ 0e54ab4f02 2016/11/25 (金) 21:54:46 修正

~メラーの家~

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雑草を掻き分け、大きく踏み出しながら歩く。
全くと言っていい程手入れのされてない、人を通す気もない玄関周り。
ここを通るだけで、かなり苦労するのだ。

やっと呼鈴のある場所にたどり着き、プッシュ。
ピンポーン、と、軽い音が鳴る。

「はーい、なんですかー?」

がちゃり、ドアの開閉音と共に、女の人が出てくる。

「すみません、メラーいますか?」

「メラーならさっきオーキド博士のところに行ったわよ?」

……入れ違いじゃないか。

「ありがとうございました……」

「あなた、今日から旅に出るんでしょ? あの子をよろしくね」

そんな事をいうとともに、すぐにドアを閉められてしまった。

「はぁ……なんでまた入れ違いなんかに……」

まぁ、そのこと自体は嫌じゃない。嫌なのは、この雑草の中をまた歩いていくことだ。

5
ガブ 0e54ab4f02 2016/11/25 (金) 22:27:53

~研究所~

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「うぃー……やっと着いた……」

「おぉ、遅かったじゃないか、ゼレナー。」

「……ふっ……」

……明らかに、馬鹿にしてるだろ?

「まぁいい。今日はお前たちにポケモンと図鑑を渡すことが目的だ。」

「お、早速か!!」

「やったぜ。……」

「さぁ、この3匹の中から一匹選ぶのじゃ。」

そう言って、じいちゃんは机の上に一つずつモンスターボールを置いていく。

炎のポケモン、ヒトカゲ。
草のポケモン、フシギダネ。
水のポケモン、ゼニガメ。

「へぇ……いっぱいいるんだなー……」

「おい、メラー! お前、先に選んでいいぜ! 俺は大人だからな!」

「……」

俺がそう言うと、メラーは無言で研究所の回復機の方に歩いていく。
そして、回復機に収まっているボールを手に取った。

「……僕は、こいつにするよ。行け、ピカチュウ!!」

「ピッカァ!」

投げたボールは空で弧を描き、中から黄色いポケモンが出てくる。

なーるほど、そういう事か。

「な……それはさっき捕まえたポケモンじゃ……」

「じいちゃん、俺はこいつにするぜ! 行け、イーブイ!」

腰に装着してあるボールセットに手を掛ける。
そして、いつもよりも気合を入れ、ボールを投げる。

「ぶいぶーい!!」

「……ゼレナーは……イーブイか……昔から仲良かったもんな……」

メラーは笑みを浮かべる。

「わ、ワシの用意したポケモンは……」

「後から送ってくれよ!!」

6
ガブ 0e54ab4f02 2016/11/25 (金) 22:34:25

「そんなことよりさ、バトルしようぜ、メラー!!」

「そうだな……」

「お、おい……ここは研究所の中じゃ! 研究資料が……」

机の上のボールが、『カタン』と揺れた。
そして、中からヒトカゲとフシギダネが出て来る。

「かぎゃ!?」

「だね……」

そいつらは、なぜか俺たちの方を見ている。
『早くバトルを始めろ』と、促しているかのように。

「……じゃ、俺から行くぜ。覚悟しろよ、メラー!!」

「望むところだよ!」

7
ガブ 0e54ab4f02 2016/11/25 (金) 22:51:33

「イーブイ、体当たりで相手の体勢を崩せ!」

「ぶぃい!!」

イーブイはダッシュし、相手の足に滑り込みを決める。

「ぴぃ……っか……」

「ピカチュウ、起死回生!!」

ピカチュウは、重心の傾いた体を素早く立て直し、助走をつける。
そして、目にもとまらぬ速さでイーブイに突っ込んで行く。

「うぉ!! イーブイ、避けろ!!」

「ぶい!?」

咄嗟にイーブイに避けろと指示を出すが、速すぎて、避けられなかったようだ。
かなり、強い。

8
ガブ 0e54ab4f02 2016/11/26 (土) 11:24:06

「クソッ! イーブイ、もう一度体当たり……」

「……ふふっ」

何故か笑っているメラーと、反応を示さないイーブイ。
どういう事だ……?

「イーブイはね、麻痺してるよ。」

「え……?」

イーブイの周りには、微かに光が飛び散っている。
いや……光ではなく、『静電気』と言った方が、正しいのかもしれない。

「ぶぃぃ……」

9

「イ、イーブイ……」

「さぁ、イーブイはご自慢の俊敏さが抑えられちゃったね」

体当たりは相手に接触する技。
そして、相手のピカチュウの特性は接触する攻撃を受けると、偶に麻痺状態にする『静電気』。
何てことだ。もう少し早く事態を把握していれば、こんなことになる前にどうにか出来たかもしれないのに……

そうこうしている内に、メラーは指示を下している。

「ピカチュウ、八つ当たりだ!」

ピカチュウは加速態勢に入り、どんどん勢いを上げてこちらに向かってくる。

何か……
この状況を打開する策は――

10

そうだ!

「イーブイ! その場で堪えろ!!」

あらん限りの力を込めて、必死に叫ぶ。

「い、いぶぅ!!」

動けないなら、動かなければいい。
かなり体力は削れているし、耐えられるかどうかも分からない。
ただ、『堪える』を使えば、その限りではないのだ。

「ピカチュウ! 今すぐ止まれ! きっと攻撃が来る!!」

「ピカァ!? ピィィカピカァ!!」

ピカチュウはまるで『勢い付けちゃったから止まれないよ!』とでも言うかのように反応する。

次の瞬間、身体同士がぶつかり合った重い衝突音が戦場(研究所)に響く。