仏教のお話

仏教随感 / 1

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ダルマ太郎 2024/04/12 (金) 23:29:19

天台大師智顗の教相判釈
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教相判釈(きょうそうはんじゃく)とは、仏教経典を分類・体系化し、相互の関係や価値を判定して仏の究極の教えがどこにあるのかを解釈することです。インドでは、釈尊が教えを説き、その教えが阿含経としてまとめられ、紀元前後に大乗仏教が起こってからは、時代に応じた経典が多く編纂されました。般若経・維摩経・法華経・浄土三部経・華厳経・涅槃経・解深密経・大日経などがあります。約千年の歴史の中で、順々に経典は作られましたので、インドでは、たくさんの経典の中で究極の教えがどの経典にあるのかを解釈することはありませんでした。それまでの経典に加上して、新しい経典が作られるのですから、後に出来た経典の方が勝れているとみなされていました。
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中国では、大量の経典が一挙に入ってきましたので、どの経典を学ぶべきかの判断が難しかったようです。多くの仏教者は、華厳経や涅槃経を勧めていますが、一致はしていません。
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中国の天台大師智顗の解釈では、最初に『華厳経』を説き、その教えが難しいため人々が理解できなかったので、次に平易な『阿含経』を説いたとしました。次に、『方等経』、『般若経』を説き、最後の八年間で『法華経』と『涅槃経』を説いたとしました。よって、最後に説いた『法華経』が釈尊のもっとも重要な教えであると主張しています。これにより、天台宗は、法華経を第一とし、所依の経典としました。学ぶべきは、法華経であると宣言したのです。このことで、法華経は注目され、日本でも法華経はよく読まれました。
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智顗:華厳経→阿含経→方等経→般若経→法華経(涅槃経)
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事実:阿含経→般若経→法華経→華厳経→大日経
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智顗は、経典に書いてある内容から判断して、経典成立の順を表しました。しかし、これは事実に反しています。最初に説かれたのは阿含経であり、法華経は初期大乗仏教時代です。よって、法華経を最高の経典だとする根拠を失います。現代では、智顗の教相判釈を参考にする仏教者は少なくなりましたが、天台系・日蓮系では、今でも信じられています。
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弘法大師空海の秘蔵宝鑰
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秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)は、空海が830年ごろに著した平安前期の仏教書です。淳和天皇の勅により撰述されたとされ、空海の代表作とされています。その中で、人の心を十段階で説明しています。十住心といいます。無宗教の煩悩に満ちた人・道徳を学ぶ人・声聞・縁覚・菩薩の道を進む人といった分類です。空海は密教なので、最高位は、真言密教になっています。この内容は、空海の教相判釈です。
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第一異生羝羊心 - 煩悩に満ちた人
第二愚童持斎心 - 儒教
第三嬰童無畏心 - 老荘思想
第四唯蘊無我心 - 声聞
第五抜業因種心 - 縁覚
第六他縁大乗心 - 大乗仏教…唯識
第七覚心不生心 - 大乗仏教…中観
第八一道無為心 - 大乗仏教…天台宗…法華経
第九極無自性心 - 大乗仏教…華厳宗…華厳経
第十秘密荘厳心 - 真言密教

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法華経は、智慧の門の入り口であり、華厳経は智慧の門に入った教えであり、真言密教は智慧に住した教えだとしています。法華経は、智慧に導くことから、非常に重要な教えだと思うのですが、法華経信者は、三番目ということが気に入らないようです。密教だけでなく、華厳経にも負けていることに合点がいかないのでしょう。空海は法華経を謗法していると批判する人もいます。おそらくは、秘蔵宝鑰をよく読まずに批判しているのでしょう。読めば納得のいく内容だと思うのですが・・・。
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